56-1 修復
「あなたたちは本当に不思議だわ」お茶を持ってくる担当医が「長く一緒にいる私たちよりも彼らと親しくなれるんですもの。なぜなのか教えてもらえないかしら?」
「経験だと思いますよ。俺たちは長い間この仕事に携わってきましたから」
「それだけなのかしら?」
「それだけです」
「いつか聞き出したいわね、そこのところ」
「どうやって?」
「どうしようかしら?」
「じゃあ、楽しみにしてます」
ショウはお茶を飲み終えると本館へ戻った。
ラルの部屋へ入ると、テーブルに二人分の食事が用意されているので「誰か来るのか?」
「ラウンジのおばさんが、ちゃんと栄養を取るようにって、ショウの分も持ってきてくれたの」
「俺の分も?」
「もし今夜、誰かと約束してたら、構わないからそのまま置いといてくれって」
「約束なんてない。ありがたくいただくよ」ラルの向かいに座ると「ずいぶんと豪華だな。うまそうだ。デザートまであって、ダンドル村にいたときみたいだな」
「……そうだね」
「やっぱり、お前は今のほうがいい」
「……今の状態では、任務がこなせない」
「そんなことない。他になにか手がある。だから、二度とあの性格に変わるな。ああいう奴は嫌いだ」すると黙り込むので「ゴメン、口調が直ってないな」
「いいの」
「でも……」
「気を遣って話をされるよりマシだって気付いた。彼女たちには気を遣ったでしょう?」
「……ああ」
「私が勘違いしてたの。上辺だけで判断してたって、気付かなかった」
「勘違いされるようなことをした。言われて当然だ」
「もういい。気にしなくて、いい」
食後、額のチップを取り、薬を飲んで脚のガーゼを取り替えると「顔のアザは目立たなくなったけど、脚はもう少し掛かるな」取り替えたガーゼをまとめ「姿はまだ変化できないか?」
「なかなかダルさが取れなくて……」
「前に教えてもらった薬の組み合わせでもダメなのか?」
「……ないものがある」
「なんで? あのあと多めに送って……追加は、頼んだのか?」
「……うん」
「……そうか」
「……」
「焦るな……ゆっくり、時間をかけて治そう」
「そんなこと言ってられない」
「焦るほど空回りするから、ゆっくり治そう」
「……口調を変えられると、変な感じがする」
「エッ?」
「なんか、いつものショウじゃないみたい」
「お前が……ラルがイヤなら変えるよ」
「前の、ままでいい」
「いいのか?」
「……いい」
「……冷遇してる気なんてないからな」
「……うん」




