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シルバーフェニックス戦記 ~護るべきものは~  作者: 夏八木 瀬莉乃
第六章 大陸にある保護団体
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55 療養所の確認

 

 翌日の午後、ショウは別棟にあるシルバーフェニックスの療養所へ出向いていた。


 ラルのことを知ってから療養所へ来ていなかったので、今回、時間を作ってきていた。


 以前、療養所へくるキッカケとなった、重度のアレルギーを起こして死にかけていた女の子はすっかり元気になって、部屋の中を走り回っている。


 ここへ来てから死を待っていた彼らも、今では少しずつ元気を取りもどし、新しい母親や子供たちと会って生きがいを取り戻しつつあった。


「彼らはもう大丈夫です」担当医が声を掛けてくる。

「奥さんと娘さんを無くしたという男性の姿、このところ見えないんですが」


「ああ、彼は向こうの部屋にいますよ」教えてもらった奥の部屋へ行くと、中学生くらいの男子四名が彼の授業を受けていた。


「彼は先生だったんですか?」


「そうなんですよ。たまたま勉強してた男の子たちを見て、先生の虫が動いたんでしょうね。今ではきちんとプログラムを組んで、毎日ああやって教えてるんですよ」


 最初に会ったときは老けこんで見えた彼もホワイトボードの前で教鞭(きょうべん)をとり、見違えるほどエネルギッシュに動いている。


 忙しいほうが辛いことを思い出す時間がないので、そうしているのだろう。


 三歳の娘を亡くしたという若いお母さんは、保育室で保育士さんたちと、小さな怪獣となって動き回る赤ちゃんたちの世話に奮闘している。


「一気に五名の赤ちゃんのお母さんになったから、辛いことを考えてる暇なんかないでしょうね」


「これはアディの指示ですか?」

「ええ。彼を中心に決めたことよ」

「やっぱりプロだっただけあるな」


 老い先短い自分がと言っていた初老の男性は、植木職人だったというだけあって、枯れかけてきた草木をものの見事に復活させていた。


 別棟の中に専用の温室を作ってもらい、そこで、本部内にある植物を一手に引き受けていると、彼の担当医が話してくれた。


 ショウは一人で中に入り「魔法でも使えるんですか?」植え替えをしている彼に声を掛けると「ああ、あなたでしたか」立ち上がり「私にはちょっとした力があるんですよ」笑顔で答えるので「もしかして、治癒再生能力をお持ちなんですか?」


「何だって?」思いもよらないことを言われて驚くが「そういえば……」

「シッ、内緒ですよ」

「ああ、そうでしたな。で、彼女は一緒ではないんですか?」


「少し体調を崩して、横になってますけど大丈夫です。元気になったら、来るように言っておきますよ」

「大丈夫ですか? 私でよかったら力を貸すが……」

「そうか……」


「許可をもらえば出られるので、言ってきますよ」温室から出ようとするので「ダメですよ。そんな事したら彼女の正体がバレてしまいます」慌てて止めると「ああ、そうだったね」


「あなたの力をお借りするときは、先に準備しておきますから、その時にお願いします」

「所詮、籠の中の鳥だね」


「そんなこと言わないでください。体調が戻れば自由になれるんですから」

「……そうだね」


「それにしても、あなたの力はすごいですね。ここの植物たちも喜んでるでしょう」

「そう言ってもらえると嬉しいよ」


 温室内を一周すると、入り口で待っていた担当医と一緒に事務室へ戻る。


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