表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
シルバーフェニックス戦記 ~護るべきものは~  作者: 夏八木 瀬莉乃
第六章 大陸にある保護団体
441/722

54-4 嵐のあとの和解

 

「お前が金を貯めた経緯を聞いたとき、すごく嬉しかった。


 ショッピングモールのショーウインドウの前であの腕時計の話をしたときから、貯めてたんだろう?


 お前が暗示で変わってから昨日まで、俺は用無しなんじゃないかと思ってたけど、その間も貯めてくれてたんだと思ったら、余計にあの腕時計が欲しいんだ」


「ナディアが見たら、なんて言うかしら?」

「普段は今までの時計をしてるさ。特別なときにだけ、付ける」

「……」


「いいだろう?」

「……考えて、おく」


「……そうか。わかった」立ち上がると「ごみを片付けてくる」紙袋を持つので「そんなこと、しなくていい」

「これくらい当然だ」


 ラルの部屋から出ると、ラウンジへ向かった。



 中に入ってごみを捨てた後、おばちゃんのところへ行って声を掛ける。


「ご忠告、ありがとうございました」

「あんたのために言ったんじゃないからね。勘違いしないどくれよ」

「わかってます」

「で、ラルちゃんの具合はどうなんだい?」


「脚の腫れは引いてきました。顔のアザは三・四日すれば消えると思います」と聞いておばちゃんはホッとすると「いいかい。どんな事になろうとも、ラルちゃんは女の子なんだよ。それなのに、あんな大ケガをさせた上に泣かせるなんて、信じられないよ」


「……返す言葉がありません」


「なんであの子が急に変わっちゃったのか私にはわからないけど、あんたは理由を知ってんだろう? もう少し(いた)わってやらなきゃダメだろう」


「はい。いろいろとご迷惑をお掛けしました」頭を下げると「私じゃなくて、ラルちゃんに謝るのが筋だろう?」  


「彼女には、許してくれるまで謝り続けるつもりです」


 その言葉を聞いて、許してやるかという顔をすると「ラルちゃんは、人に言えない重りのようなものを持ってるんだろう?」

「エッ?」


「私だって伊達に年は取ってないよ。あんなに気が強かった子が急に涙を見せるなんて、気の強さはきっと仮面だったんだと思うよ。心の中の弱さを他人に見せないための、よそ行きの顔ってことだよ」

「……」


「その顔はわかってるって顔だね。それなら、尚さらそこんところを汲んでやらなきゃダメだろう。本当は、そんな仮面を付けること自体、やめさせたほうがいいんだけどね」


「おばさんはすごい眼力を持ってるんですね」

「ここに居ればいろんな人と会うからね」


「アイツの食事の面倒、お願いしていいですか?」

「ああ、引き受けるよ」


 おばちゃんの返事を聞くと、ショウは一礼してラウンジから出た。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ