26-1 助っ人
翌朝の午前八時。
ブルースカイホテルの部屋で出発の準備をしていると、ドアがノックされた。
「ハイ」
「キラ、俺だ」
「エッ!」
(この声はショウ!)
「ドアを開けろ」
(なんで彼がここにいるの!)と思いつつ「あの、部屋を間違えてますよ」
「そんなこと言ってる場合か! いいから早く開けろ!」
なにやらただならぬ雰囲気を感じ、チェーンロックをしたままドアを細めに開け「何かあったんですか?」と聞くと「いいから早く開けろ!」苛立つショウの顔が見える。
勢いに押されてドアを開けると、ズカズカと中へ入ってくる。
「ちょっと! 勝手に入らないで!」
「そんなこと言ってる場合じゃないと言ってるだろう! 荷物はこれだけか?」ベッド脇に置いてあるトランクを持ち、椅子に掛かっているバッグを取って渡すと「すぐここから出るんだ。急がないと奴が来る」腕を掴み、部屋から出る。
「ちょっと、奴って誰?」
「アレンだよ。捕まりたくなかったら急げ!」
「彼はお昼まで起きないわ」
「とっくに起きてるよ! そして、こっちへ向かってる!」
「チェックアウトしてないわ!」
「さっき俺が済ませた!」
急ぎ足で業員用のエレベーター前にくるとボタンを押す。
「ねえ、なんでアレンがここへ来ることを知ってるの?」
「奴からの電話を取ったからだ」
「彼と知り合いなの?」
「ホテルに掛かってきたんだよ!」
エレベーターが来たので乗り込むと、地下一階のボタンを押す。
「ホテルに掛かってきた電話を、どうしてあんたが取るのよ」
「バイトとして潜り込んでたんだよ」
「エエッ!」
エレベーターが地下一階に着くと、入り組んだ通路を奥へと走る。
「どこ行くの?」
「地下駐車場だ。俺の車を停めてある」
突き当たりの扉を開けて駐車場に出ると、入り口近くに停めてある車へ向かう。
「後部座席に横になってシートを被ってろ!」
トランクを開けて荷物を入れ、車に乗り込むと、エンジンを掛けて駐車場から出る。
かなり走ってホテルが見えなくなると「もう出てきていいぞ」
「あっつい!」ガバッとシートをどかすと大きく息を吐く。
「その格好じゃ危ない。変装を解け」と言われ、金髪のヴィックを取るとカラーコンタクトを外す。
さらに十分くらい走ると、道路沿いにあるレストランの駐車場へ入った。
建物の奥に車を停め「ヴィックや見付かったらマズいものは捨ててこい。証拠は残すな」駐車場の奥にある焼却炉を指すと「でも」
「検問に引っ掛かりたいのか?」
「検問?」
「奴は、警察に連絡して、各道路で検問をやらせろと言ったんだ」
「エエッ!」
「そのとき見付かったら、すべてがパアになるぞ」
そう言われてヴィックとカラーコンタクトを持つと、焼却炉へ走る。
戻ってくると「他のものはどうした?」と聞いてくるので「処分済みよ」
「そうか」ホッとため息を吐くと「飯まだだろう? 中へ入ろう」
二人は車から降りるとレストランへ入った。




