54-1 嵐のあとの和解
「お前が生活費を切り詰めて金を貯めてたなんて、知らなかった」
「……気にすることない。あれは、私が勝手にやったことだから」
「もう少しお前の行動に気を配ってたら、気付いたのに……」
「自分を責めるようなことはしないでいい。ショウがそんなことする必要ないんだから」
「……ラル」
「ごめんなさい。昨日は言いすぎた。ショウがああいう行動を取るように仕向けたの、私なんだもの。自己暗示を掛けて変わった私が取った行動のほうが、非難されるべきなんだもの」
「そんな事ない! もとはといえば、俺たち人間がお前たちを追いつめた。自由を奪っておきながら、それに対抗するために変わったお前の行動をとやかく言うのなら、その前に、俺たち人間が取った行動のほうが責められなければならない!」
「ショウは、そんな事やってないじゃん」
「エッ?」
「人間を恨んでることは確かだけど、一括りで見ないように、心掛けようと思ってる」
「……」
「ナディアたちが取った行動は、普通の生活ではよくあることでしょう? ショウが普通の生活の戻りたいと思うのも、当たり前のこと。ただそれに、私が勝手にやってたことが、裏目に出てしまっただけ」
「……」
「間が悪かっただけ」
「間が悪かったら、お前がこんなケガをしていいというのか?」
「これは私がミスをしたから。ショウのせいじゃない」
「お前を一人で行かせるようにしたのは俺だ!」
「ううん、成り行き上、こうなっただけ」
「……」
「だから、気にしなくていい」
「お前は優しすぎんだよ! なぜ俺を責めない! こんなケガをしたのは俺のせいだとなぜ罵らない! お前が大ケガをして戻ってきたとき、俺はなにも知らないでお前を責めたんだぞ!」
「話さなかった、私が悪いんだもん」
「お前はなにも悪いことなんかしてない!」
「……」
「だから、お前が悪いんじゃない」
「……最初は、ショウが何か言ってきたら、ナディアのご機嫌取りなんかして、現を抜かしてるから、当てになんかできないって、言おうと思ってた」
「なぜそう言わない? 言って当然だろう?」
「言えない」
「なんで!」
「だって、よく考えたら、ショウが誰とお茶を飲もうと、それはショウの自由だもん。
彼女たちが私に抗議してきたことだって、ショウに対する私の態度が許せなかったんだと思う。
私がショウのことを蔑ろにしてると思っても、それは当然のこと。だって、本当にそういうふうに接してたんだもん。
アディにも、もっと相棒を大事にしたほうがいいと言われたくらいだから、相当目についてたんだと思う。だから、ショウが私から離れるのは当然のこと。
そのショウに対して、現を抜かしてると言うなんて、自分勝手もいいところだと気付いたの」
「だからって、お前一人が苦しんでいいということにはならないだろう?」




