51-3 すれ違いの真相
通路を右へ曲がろうとしたとき、脚がもつれて転んでしまうと、カラカラカラ。転んだ拍子に、ポケットに入っていた細長い箱が落ちて転がる。
「大丈夫か!」駆け寄るショウが「あれは?」プレゼント用なのか、きれいにラッピングされている。
ラルは四つん這いになって箱を取ると、ポケットにしまう。
「ラル、それは?」
「なんでもない!」
「誰かに渡すプレゼントか?」
「なんでもない!」四つん這いのまま角を曲がると、壁に手をついて立ち上がる。
「立つな!」
「命令しないでって言ってるでしょう!」
「いいから言うことを聞け!」
無視して歩きだすとバランスを崩して前のめりに転び、再び箱がポケットから落ちる。
ショウが拾おうとすると「ダメ!」止めるラルがまた這っていって箱を取ると、ポケットに入れる。
「べつに取ったりしない」
またラルが立ち上がろうとするので「やめろって! その脚じゃ部屋まで持たない!」
「ホッといて!」歯を食いしばって立ち上がるが、結局、数分も持たずに座り込んでしまう。
「無理だと言っただろう」
「……痛い……」擦る右脚の具合を見ると「大分熱を持ってるな。もう動かすな」
「……なんで、私には、命令口調なの?」
「……」
「しょうが、ないのか。私がそう、仕向け、ちゃったんだ、もんね」
「……ラル」
「痛みが、引くまで、ここに、居るから、先に、行って」
「何言ってんだ。早く手当てしないといけないだろう」
「……ホッといて、いいから」
「まったく、さっきからホッとけとか構うなとか言いやがって」ラルを抱き上げると「降ろして!」
「黙ってろ!」
「……なんで、そんなこと、言われないと、いけないの!」
「いいから黙ってろ!」
「……」
「話の続きは部屋に戻ってからだ。ここだと誰かに聞かれてしまうだろう」
ラルの部屋に入るとベッドに座らせる。
「なんだ、この薬の山は」
ベッド脇にあるサイドテーブルに、山のような湿布薬と多種多様の塗り薬ぎっしりと並んでいた。
ラルはポケットから薬を取り出すとまとめて飲み、靴を脱いで向かいの椅子に足を乗せると、ズボンの裾を上げてプロテクターを外す。
「俺がやる」手を出すと「自分でやる!」手を振り払い、包帯を取っていく。
ラルの涙がその包帯を濡らしていくと「いいから、脚をこっちに降ろせ」
「触らないで!」
一瞬手を止めるが、ラルの手から包帯を取ると、脚を椅子から降ろす。
「自分でやる!」
「これくらいやらせてくれ」ラルの前にしゃがむと包帯を取っていく。「俺のせいで、こんなケガを、させてしまったんだ」
「自分でやるからいい!」
「いいから動くな!」包帯を取りおわると「このアザ……」足首にも手首と同じアザが付いているのでラルと見ると、ソッポを向く。
左足の靴下を脱がすと、そこにも同じアザが付いているので「どういう扱いをされたんだ?」と聞くが、答えない。
「まるで、地下牢にでも閉じ込められてたみたいだぞ」
「……」
「そうなのか?」
「……」




