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シルバーフェニックス戦記 ~護るべきものは~  作者: 夏八木 瀬莉乃
第六章 大陸にある保護団体
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50-3 衝撃

 

 しばらくしておばちゃんがラルの食事を持ってくると「脚の腫れがひどくなったのかい? 前よりも痛そうに歩くじゃないか」と聞くが、ラルは俯いたまま答えない。


 そんな彼女の顔を覗きこむと「その顔はどうしたんだい! アザができてるじゃないか!」


 すると慌てて顔を背けるので「とにかく食べなさい。お腹が空いてるだろう?」手を出さない彼女に「ラルちゃんは悪くないよ」声を掛けると、彼女の頬を涙が伝う。


「ラルちゃん!」


 声を出さず、ただ涙を流すラルに「ほら、食べないとダメだよ。一昨日の夜からなにも食べてないんだろう?」ハンカチで涙と拭くと「おや、それはなんだい?」上着の右ポケットから細長い箱が出ているのに気づく。


 するとポケットの奥へ押しやるので、それ以上その箱について聞かず「とにかく食べなさい」またラルの涙を拭く。



 次の日の夜遅く、ラウンジが閉店する三十分前にラルが来て、夕飯をいつもの吹き抜け側の席で食べ、薬を飲もうとポケットから出していると、向かいの席に誰かが座った。


 おばちゃんかと思って顔を上げると、向かいにいたのはショウだった。


 ラルは慌てて出した薬をポケットにしまい、トレーを片付けずにラウンジの出口へ向かうと「ラル! 待て!」ショウがあとを追う。


 その光景をカウンターの奥から見ていたおばちゃんは、何も言わずに二人を目で追っていた。



 ラウンジから出たところでラルの腕をつかみ「その脚はどうしたんだ!」


「ショウには関係ない!」手を払うと「その顔……どうしたんだ! アザができてるじゃないか!」


「なんでもない!」顔を背け、右脚を引きずりながら歩いていくと「待て!」あとを追ってくるので「来ないで! 私より彼女の心配をすればいいでしょう!」


「ラル!」

「来ないで! 彼女たちに見つかったらどうするの!」


「なぜそんなにナディアたちに(こだわ)る! ナディアのなにが気に食わないんだ!」


 そう言われてラルは立ち止まり、振り返ってショウを見ると「なにがですって?」と聞き返す。


「そうだ。なにが気に食わない? なぜそんなに敵視して見る?」

「知らないの?」

「なにを?」


 ラルは呆れてため息を吐くと、再び歩きだす。


「待て! 答えてないだろう!」ラルの前に立つと「こんな所にいないで、彼女のお守りをすればいいでしょう!」


「ナディアは部屋に戻った」

「それなら、明日の仕事の準備でもすればいいじゃない!」


「またバンダナをしてるな」

「どいて!」ショウをどかして歩きだすと「待て!」再びラルの前に立ち「二・三日前まではしてなかったのに、なぜしてる!」


「ショウには関係ない! 私なんか構わないで、彼女を構えばいいでしょう!」

「……お前、今日は変だぞ」

「変で結構よ! どいて!」


 再びショウをどかそうとするが、今回、彼は動かなかった。


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