46-2 危機からの帰還
陽がすっかり昇ったころ、手当てが終わった。
『このままじゃ危ない』ラルの具合を見るエミア。
呼吸が浅くグッタリしていて、明らかに衰弱しているのがわかる。
『どうしたらいいの?』困った顔をするミランドが『なんとかできないの?』と聞くと『ウィルシーに聞いてみましょう。何か良い方法を知ってるかもしれない』
湖へ行くと、心配顔で待っていたウィルシーにラルの状態を話し、体力を回復させる良い方法がないか聞くと『前に、老木の精霊から気を分けてもらったことがあります』ウィルシーの隣にいるフロス アクアエが話に入ってくる。
彼女はショウに、ラルの本名を教えてしまったフロス アクアエ。
『本当なの?』ミランドが聞き返すと『はい』と答え、その時のことを詳しく話す。
するとウィルシーが『樹齢二百年を超える木は、自ら気を造り出せるようなりますのよ。
そして、外へ放出して周りものを育てますの。
この近くにそういう老木がないか探して、ラルに気を分けていただけるようにお願いしてください』
エミアを見ると、近くにいるイータル ヴェンティに探しにいくよう言い、急いで森の中へ飛んでいく。
広大な森のため、目的の老木はすぐに見つかり、エミアが交渉すると老木の精霊は快く引き受けてくれたので、イータル ヴェンティたちがラルを抱えて連れていくと、充分な量の気を分けてくれた。
おかげで呼吸が落ち着き、肌に赤みが戻ってくる。
『気をもらった後、彼女はすぐに元気になったんですけど……』先ほどのフロス アクアエが呟くので『目を覚まさないということは、それだけ危険な状態だったということよ』ラルを見るエミア。
『それに、副作用があると聞いてますわ』
『どういう症状が出るの?』ミランドが聞くと『それが、わたくしも詳しく知りませんのよ』
『目が覚めたら本人に聞くしかないわね』ミランドを見るエミアが『彼女には私たちが付いてるから、あなたは本部へ戻って』
『でも、エミアも徹夜したでしょう?』
『私たちが付いてますから、心配しないでください』エミアの傍にいるイータル ヴェンティのアウラ マリスとアウラ リートレが声を掛けてくるので『じゃあ、お願いするわね。夜になったらまた来るから』
ミランドは本部へ戻ると部屋に荷物をおき、朝食を食べにラウンジへ向かった。
「ラルちゃん、また無理してるんじゃないのかい?」顔を見るなりおばちゃんが声を掛けてくるので『あ、ああ、ちょっとね』
「今日は仕事しないで寝てな。食事は部屋へ運んであげるから」
『忙しいおばさんにそこまで甘えられない。お昼はいいから、夕飯に豪華なものを作ってれる?』
「はいよ。うんと腕を振るって作ってあげるからね」
『ありがとう。楽しみにしてる』
ミランドは作ってもらったサンドイッチを食べると、部屋へ戻った。




