43-2 ショウの異変
一旦部屋に戻って変装を解くと、六階のワークセクションへ行って、念のためアディに聞いてみた。
「なにかショウから情報を聞いてないかって? これといって、重要な情報を掴んだとは聞いてないけど」
『そう。じゃあいいの』
「なにかあったの?」
『大したことじゃないの。忙しいところを邪魔してごめんなさい』
その日の夜、午後九時過ぎにラウンジへ行ったミランドを、アディが待っていた。
「ラル!」奥のボックス席から声を掛けるアディが「やっと来たか」と言うので『どうしたの?』夕飯が乗ったトレーを持って彼の向かいに座ると「さっき、君に聞かれたことが気になってね」
『大したことじゃないと言ったはずよ』
「あの後ショウにも聞いたんだけど、彼も大したことじゃないと答えたんだよ」
『私が聞いたと話したの?』
「いや」
『そう……』
「君たちの間の溝がかなり深くなってるようだね」
『そんなことないわよ』
「ウソを吐いてもダメだよ」
『どうしてウソだとわかるの?』
「じゃあ、どうして僕に聞いたの?」
『聞いたらいけない?』
「大したことじゃないんだったら、直接ショウに聞けばいいだろう? 僕を通して聞くのは、距離が離れてるからじゃないのか?」
『……それはね、ショウと会う機会がないからよ』
「部屋が隣同士なのに?」
『行動する時間帯がずれちゃってるの。私、夜行性だから』
「で、本当の理由は?」
『どういう意味?』
「僕にウソは通じないと言っただろう?」
『ウソじゃないわ。本当のことよ』
「じゃあ、まだ他に理由があるだろう?」
『どんなこと?』
「まだナディアたちが何かしてるの?」
『最近は大人しいわよ』
「ということは、前はすごかったのか」
『……そんなことないわ』
「なんでそこまでナディアたちを庇うんだ?」
『庇ってないわ。呆れてるだけ』
「どういうふうに?」
『どうって』
「ナディアたちは何をしてきたんだ?」
『フゥ、あなたと話をすると、本当に疲れるわね』
「今回ばかりは黙ってられないから、話してくれるまで聞くよ」
『何を?』
「ナディアたちが何をしてきたんだ?」今度は厳しい顔で聞いてくる。
『もう終わったことだから』
「じゃあ、君が彼女たちの言うことを受け入れたのか。そこまで露骨に何をしたんだ?」
『アディ』
「君の行動の変化には気付いてたんだけど、このところ仕事のほうが忙しくて、時間が取れなかったんだ。気持ちに余裕がなくて、君たちのことをほっとくようなことになってしまった」
『あなたがそこまで気を遣うことないのよ』
「君たちの戦力を失うことはできないと前に話しただろう? 何があったんだ?」
『……わかった、話すわよ。本気でショウのことが好きらしくて、独り占めしたいらしいのよ。だから、ワークセクション以外では、彼と話をしないでくれと言われたの』
「ナディアが彼のことを気に入ってたのは知ってたけど、本気だったとは思わなかった。いつもの気まぐれだと思ってたよ」困った顔をすると「君にそこまで言うとも思わなかった」
『私も驚いたわよ。確かにショウは外見は恵まれてると思うけど、あの性格がわからないとは思えないもの』
「どういう意味?」




