42-3 ズレる気持ち
それから数日後の夜。
恒例の湖会議。
『ラルの体調が心配だわ』
彼女と代わるたび、この会議が開かれていた。
『例の彼はどうしてるの? 相変わらず声を掛けてくるの?』とエミアに聞かれ『時々ね。なぜお茶に拘るのかわからない』首を傾げるミランド。
『わたくしは、ラルの行動の変化になぜ疑問を持たないのか、そちらのほうが気になりますわ』考えるウィルシーに『そうよね』エミアも同意する。
『鈍感なだけなんじゃないの』言い返すミランド。『髪型を変えたり新しい服を着ても、全然気付かない男って珍しくないでしょう?』
『でも、彼がそのような類の殿方とは思えませんわ』
『なんで?』
『この前、化粧っけがないとか、いつも同じような服を着ているとか、もっとオシャレしろとか言われたんですよね?』
『そうよ。そんなこと言うんだったら、当然、ラルの行動の変化にも気付いてるはずよ』頷くエミア。
『理由の一つとして考えられるのは、変化してもおかしくないと思っている、ということですわね』
『そんなこと、あり得るかしら?』考えるミランドに『自己暗示を掛けて彼女は変わったわ。考えられないことじゃないわね。ミランドはラルと会って日が浅いから、わからなくて当然よ』
『すると、変わった性格が以前と違う行動を取ってると思ってる、ということね?』
『そうでしょうね』
『ところで、嫌がらせのほうはどうなってますの?』
『今のところ、前みたいに面と向かって言われることはないわね』
『でも、小さなことはあるの?』怪訝そうなエミア。
『動きを監視されてるのは続いてる』苦笑するミランド。
今はミランドが監視されていることになる。
『彼はまだ、この事をご存じないんですよね?』
『そうよ』
『先頭に立ってる子がアイドル的存在なのがネックね』まったくという顔をするエミアが『うまい手を考えるものね。自分に熱を上げてる男を操るなんて。操られてる男もバカよね。利用されてるとわかってるかもしれないけど、それでも言いなりになるんだから』
『本人が良ければいいのではありませんか?』冷めた言い方をするウィルシー。
『傍から見てると滑稽よ』とミランドが言うので『そうでしょうね』頷くエミアが『それで、最近の彼の行動は、なにか変化あった?』
『それが、噂を耳にしたんだけど、どうやらナディアたちと距離を取りだしたらしいの』
『それはいけませんわ。もし彼が取り巻きの女性たちともっと距離を置きはじめたら、彼女たちはラルのせいだと思ってしまいますわ。そうなると、ラルにもっとひどいことを仕掛けてくる可能性がありますもの』
『なぜ彼が急に距離を置くようになったのか、その理由を調べないといけないわね』
『そこのところを調べる方法はありませんの?』
『そうね……』考えるミランドにエミアが『ラウンジのカウンターにいるおばさんなら、何か知ってるかもしれないわよ』と言うと『おばさんは彼にいい感情を持ってないから……』
『でも、ラルのために見てくれてるかもしれないわよ』
『そうね。聞いてみる』




