41-1 カイのお見舞い
数日後のお昼、ラルはカイの病室を訪ねていた。
「思ったより元気そうでよかった」
「動けないのが辛くってさ。それに暇で、暇で、来てくれて嬉しいよ」
精密検査の結果、脳やその他に異常がなかったが、脚の骨折が思ったより複雑だったので、長い入院生活を送らなければならなかったため、話し相手とラルが持ってきた果物が暇なカイには嬉しいらしく、皮を剝いた桃をおいしそうに食べはじめる。
「退屈そうね」
「タキたちは仕事が忙しいから、そうちょくちょく来れねえし、ゲームやりたくても、指をケガしてっから曲がんなくてさ」右手の人差し指と中指に包帯がまかれている。
「それは辛いわね。ねえ、白亜の要塞に行ったときのことを聞かせてくれる?」
「ああ、いいぜ」お替わりの桃をもらうと一口かじり、潜り込む前日のところから話しはじめる。
「今回の作戦のメンバーは、俺とスタン、ジット、他に三名で組まれたんだ。潜りこむ二日前に近くの町に入って、そこで情報部員と合流した。奴らから新たにわかった情報を聞いて、その後、作戦と照らし合わせて、変えるところがないかを話し合ったんだ」
「新しい情報は、作戦を変更するほどのものだったの?」
「まあな。急に警備員の配置を変えやがってさ。こうなったら一日早く潜りこんで、じかに配置転換された情報を取ったほうがいいってことになったんだ」
「危ないんじゃないの?」
「変更になったのは配置だけだったから、その点をクリアすれば大丈夫だと思ったんだ」
「思ったってことは、配置以外にも変更があったってことね?」
「そうなんだよ。彼らの幽閉場所も変わってたんだ」
「警備員の配置を変えた理由はそこにあったのね?」
「そう。配置と一緒に彼らの幽閉場所まで変わってただなんて、情報部員たちは知らなかったんだ。と言うより、知らされてなかったんだ」
「どういう意味?」
「情報部員たちの面が向うにバレてたんだ」
「なんですって! じゃあ、罠に掛けられたの?」
「ものの見事にな」
「それでみんな無事に戻ってこれたなんて、奇跡だわ」
「ジットのお陰さ。屋敷内部に手を貸してくれた元部下がいてさ。彼らのおかげで逃げだせたんだ」
「そうだったの。でも、助けてくれた元部下の人達は屋敷に残ったんでしょう? 大丈夫かしら?」
「心配するなと言ってたけどな。とにかく、俺たちはケガを負っちまったから、幽閉されてる彼らを助ける余裕がなかったんだ」
「向こうに一杯食わされたのね。それで、面がバレてた情報部員たちはどうしたの?」
「別の村へ避難させた。あのまま本部へ連れてくるわけにいかなかったからな」
「なぜ?」
「向こうに面が割れてたんだぜ。なのに捕まえなかった。泳がせてたってことは、目的があるってことだろう?」




