40-3 エスカレートする行動
そんな状態がさらに一ヶ月近く続いたある日。
白亜の要塞へ向かっていたジットたちのチームが、彼の二人の娘を連れて戻ってきたが、チームの半分が負傷し、ジットもその中に含まれていた。
ケガの治療を終えたジットが会議室に入ってくると「大丈夫ですか?」ラルが声を掛ける。
「これくらいの傷で娘たちが取り戻せたのなら、軽いものだよ」体中、包帯が捲かれている状態なのに、満面の笑みで答える。
「とにかく、みんな無事でよかった。それで、娘さんたちは?」
「家内のところにいるよ」
「奥さんはさぞかし喜ばれたでしょうね」ショウが話に入ると「久しぶりに家内の笑顔を見たよ」嬉しそうに目じりを下げる。
「ところで、カイとスタンはどうしたの?」姿が見えなのでラルが聞くと「カイは入院したよ。左脚を骨折したんだ。全治半年だとドクターから聞いてる。スタンは、今回のことをコンピュータにインプットしてるよ」答えるアディ。
「カイは入院したの?」
「階段から落ちたんだよ。娘を庇ってね。彼にはお礼をしないといけない」ジットが説明すると「その時、頭を打ったらしいから、精密検査を受けることになったんだ」補足するアディ。
「今回は厳しかったよ。作戦も半分しか成功しなかった」ジットがため息交じりに話すので「では、彼らは救出できなかったの?」
「……ああ」申し訳なさそうに頷くので「今回のことで、向こうは仕掛けなど変えるだろう。また調査をしなおして作戦を立てるよ」アディが口を挟む。
「申し訳ないね。娘たちを助けるだけで、精いっぱいだったんだ」
「娘さんたちが戻ったし、みんなケガを負ったが無事だったんだ。ジットを責めるのは良くない」とショウが言うので「責めてないわ。いつも作戦が成功するという保障はないもの。こういうときだってあるわよ」
「とにかく、ゆっくり休んでくれ」声を掛けるアディ。
「久しぶりに家族が揃ったんだもの。家族団欒を楽しんで」
「ああ、そうさせてもらうよ」笑顔で答え、ぎこちなく歩いて会議室から出ていく。
ジットのあとから会議室を出るラルに「この後、時間あるか?」ショウが声を掛けてきた。「話がある」
「……どこで話すの?」
「打ち合わせ室なら空いてるだろう?」
「そうね」
同じ階にある打ち合せ室へ向かっている途中で「カイのお見舞い、いつ行ったらいいかしら?」
「精密検査の結果が出てからのほうがいいだろうな」
「そうよね。骨折、ひどいのかしら?」
「どうだろうな」
「あ、ちょっと待ってて。スタンに、今回の報告書のコピーを取らせてもらうから」
少し先にあるリサーチルームへ入り、コピーを二部持って出てくると、頭数が増えていた。
(やっぱり出たか)ため息を吐き(すごい情報網を持ってるのね。ニュースソースはナディアの信者かしら?)




