40-1 エスカレートする行動
そんなある日、グループへ任務の報告を終わらせたラルがラウンジでお茶を飲んでいると、ショウが向かいの席に座った。
「ちょっと! 気を付けてよ!」
「何に気を付けるんだよ」
「あのねー」
「なんだ、寝起きなのか?」
「ハァ?」
「違うのか?」
「当たり前じゃないの。今何時だと思ってるの?」
ただいまの時刻、午後一時半。
「化粧してないから、さっき起きたのかと思った」
「ちゃんとしてるわよ」
「エッ?」マジマジと顔を見るので「ちょっと、そういう態度はムカつくわね」
「ああ、また口紅を塗ってないのか」
「リップです!」
「何かあったのか?」
「何か?」
「今までこんなことなかったじゃないか」
「こんなこと?」
「いつもちゃんと化粧してたじゃないか」
「キチッと化粧しなければいけない決まりはないでしょう?」
「それはそうだけど」
「そんなところまでチェックしてどうするのよ」
「べつに」
「じゃあ、いいじゃないの」
その時「ラルちゃん! あの子たちが来るよ!」おばちゃんが教えてくれるので「ショウ! 席を移って!」
「なぜ?」
言葉が出ないラルが席を立つと「まだ話は終わってない!」止めるショウに「私は終わった」
「一緒にいたっていいじゃないか!」と言うので、ラルは呆れると席から離れた。
それから半月後、ラルは食事のときにしかラウンジに来なくなっていた。
「ラルちゃん、このごろお茶を飲みに来ないね」おばちゃんが聞いてくるので「だって、ゆっくり飲んでいられないんだもの」
今まで時々にしか顔を合せなかったショウたちが、あのあと頻繁にラルがお茶を飲みに来る時間に来はじめて、その度に、ショウが一緒にと声を掛けてくるようになっていた。
当然、こうなると黙っていないのがナディアたちで、その度、ラルにきつい視線を向けてくる。
そんな事が続いたある日、ラルが一人のときを見計らって「ここに来る時間を変えてください!」ナディアの取り巻き数名が抗議してきた。
「私は仕事してるんだから、時間に制限があるのよ。顔を合わせたくないのなら、自由時間がたくさんあるあなたたちが変えればいいでしょう?」
「では、ご自分の部屋で飲んでください」
あまりにも無謀なことを言われ「ラウンジはあなたたちのものではないでしょう? それに、そこまで私の行動を拘束できる権利はないはずよ」
「できる、できないは関係ありません。してもらいます」
「……呆れてものが言えないわ」




