39-1 危険な目
それから二日後、ラルはミランドに交代を頼んだ。
『体のほうは大丈夫なの?』
「まあね」
『なにもラルが行くことないじゃないの。他のメンバーに代わってもらうことはできないの?』
「私が一番近くにいるのよ」
『……そう』
「今回は一名助けるだけだから、すぐに戻ってくる」
その日の夜、ラルは目的地へ向かった。
翌朝、ラルと代わったミランドがいつものようにラウンジへ行って朝食を取り、食後のお茶を飲んでいると、アディが来て「ケガの具合はどう?」と聞いてきた。
『お陰様で、すっかり良くなったわ』
「そうか。それは良かった」
『ご心配をお掛けしました』
「ここ、いいかな?」向かいの席を指し、座ると「思ったより元気そうでよかったよ」
『そう? ところで、ジットのほうはどうなってるの?』
アディと一緒に、白亜の要塞と呼ばれる屋敷に住んでいる一卵性双生児の領主のもとで、狩り人のリーダーをしていた有名なスパイ、通称、闇のジルタニスの娘二人が領主の屋敷に囚われている件で、調査のし直しで計画していた作戦が使えなくなっていた。
「目途が立ったよ。来週頭に出発する」
『来週? 聞いてないわよ』
「君は今回外したんだ。ケガをしたあとじゃ無理だからね」
『ごめんなさい。私の不注意で迷惑かけちゃったわね』
「気にすることないよ。ところで、ショウとは相変わらずなのかな?」
『まあね。見てのとおりよ。お姫様のナイトになってるわ』
「僕も何回かナディアに言ったんだけど」
『素直に聞く相手じゃないわよ』
「悪いね。今までかなり甘やかしてきたから」
『仕方ないわ。お姫様相手じゃ勝ち目ないもの』アッケラカンと言い返すとアディは苦笑して「コンビ解消という最悪なパターンだけは避けてほしいから、ショウにも言ってるんだけどね」
『まあ、ありがとう』
「なんか、コンビ解消になっても全然平気なように見えるけど」
『そう?』
「もう少し、相棒を大切にしたほうがいいんじゃないかな?」
『私が彼をこき使ってるような言い方をするのね』
「時々そう見えるよ」
『あら』
「とにかく、君の任務は先延ばしにするから」
『私は大丈夫よ』
「それは僕が決めるよ」
『……わかりました』返事すると、またアディがジッと顔を見てくるので『なに? 何かついてる?』
「いや」
『何か言いたいことがあるんじゃないの?』
「君は、本当にラルなのか?」
『エッ』
沈黙が続く中、ミランドの反応を見ているので『私じゃなければ、何者なの?』
「それを教えてほしいんだ」
『どういうふうに? 変装してましたとか、実は双子の姉妹なんですとか?』
「……なぜなのかわからないけど、君が二人いるような気がするんだよ」
『気のせいだと思うけど。私は二重人格じゃないから』
「……わかった。じゃあ」席を立つとラウンジから出ていく。
『やっぱり違和感を感じてるんだ。ちょっと気を付けないといけないわね』ため息を吐いてアディの後ろ姿を見送る。




