2-3 保護活動
チッ、チッ、チッ、カチッ。
一瞬、外灯の光が瞬きする。
エアバイクは、会社の敷地内から出て森の外れにある崖の手前まで行くと、停まった。
「フーッ、間一髪セーフ」女が腕時計を見て胸を撫でおろすと「ア~ッ、寿命が十年縮んだ~」グッタリするショウ。
「助けてやったのに、その言い方は何よ!」
「何って、他に方法があったろう?」
「あんたを助けに行ったんじゃないのよ。文句を言われる筋合いないわよ!」
「ハイハイハイハイ。助けていただいてありがとうございました!」
「わかったら降りて」
バイクから降りて抱えているエレナに「恐くなかったか?」と聞くと「ちょっと恐かった」ケロッとした顔をして答えるので「女って、年齢に関係なく度胸が据わってるんだな」
あれだけ大騒ぎしたのが恥かしくなったようだが「でも普通、あんなダイビングしたら、誰でも恐いと思うけどなあ」
「いつまでもブツブツ文句を言わない!」
頭ごなしに叩かれて首をすくめると「オー、こわっ」と言うが女は無視し、エレナに「行くわよ。いらっしゃい」と声を掛ける。
傍にきたエレナにマントを着せるとフードを被せ、抱き上げて自分の前に座らせると、ショウが崖先に見える、森に囲まれた麓に広がる街を見る。
「グリーンライトシティか。街の名前の由来になったこの夜景も、エレナがここから離れることで、見られなくなってしまうのか」名残惜しそうに呟くと「文句を言うなら、こういう事態を作った強欲どもに言うのね」エレナの頭を撫でながら言い返す。
「ま、仕方のないことか」ため息を吐くと「仕方ないじゃ済まされないわよ」
「そうだよな。この世界から自然が消滅していくんだから」
しばらく沈黙があったあと「さ、そろそろ行きましょう」エレナに声を掛けてエンジンを掛けると「ちょっと待てよ。また置いてこうとする」
「あそこから出してあげたんだから、それだけでもありがたいと思ってもらいたいわね」
「それはそうだけどさ。街まで一体何キロあると思ってんだ?」
「さあ?」
「お姉ちゃん、お兄ちゃんも乗せてあげて」
「エレナは優しいな」彼女は俺の味方だぞ、と得意げな顔をする。
「それはダメよ。わかるでしょう?」
「でも、街までならいいでしょう?」
「エレナ」
「お願い、お姉ちゃん」
「もう、仕方ないなあ。でも、街までよ」
「サンキュウ! アー助かった。こんな所に置いてかれたら、また捕まっちまうよ」バイクに跨りながらホッとした顔をする。
三人が乗ったエアバイクは一路、街へと向かって森の中を走る。
「そういやあ、あんたの名前を聞いてなかったな」ショウが後ろから声を掛けると「キラ」とぶっきらぼうに答える。
「キラ? ニックネームか?」聞き返すと返事をしないので「ハハァ、本名がバレると困ることしてんだろう」
「そんなにヒッチハイクがしたいなら、したい、と先に言いなさいよ」
「そんなつもりはないよ。今のはただの冗談」
「冗談は、時と場所と相手を選んで言いなさい」
「以後、気を付けます」
「街まで無事に着きたかったら、大人しくしてるのね」
「ハイ」
二人がこんな会話をしている間、エレナはジェットコースターに乗っているようにはしゃいでいた。