21-4 同行
しばらくの間、沈黙が続いたあと「どこ行きの船に乗るんだ?」
しかしキラは答えない。
「時間は?」
「お願いだから、これ以上負担を掛けるのはやめて!」初めて余裕のない顔を見せるので「一人で大丈夫か?」
「アッ」我に返って表情を戻すと、再び外を見る。
「少しは、お前の力になってやれると思う」
「何言ってるのよ。さっき、私のことなんかどうでもいいようなこと言ってたじゃないの」
「ああいうふうに言わせたのはお前だろう」
「じゃあ、本当は、私に興味があるとでもいうの?」
「あるね」
「エッ!」
「お前がどういう人物なのか。隠してることは何なのか、大いに興味がある」
「……話す気ないわよ」
「……わかってる」
少しすると、ブルースの生演奏が始まった。
ブルーのきれいなドレスを着た女性が出てきて、独特のハスキーボイスで甘い恋の歌を歌いはじめる。
数曲が過ぎたとき「ブルースは好きだけど、恋の歌は嫌いだわ」
「なぜ?」
「私が、恋するタイプに見える?」
「今の性格を少し直せば、結構いけると思うけど」
「あら、そう?」
「ああ」
この後二人は、数杯のお酒を飲んだ。
一時間後に生演奏が終わると、店内はザワザワと人の声の波が支配しはじめる。
「どうした? 泣きそうな顔してるぞ」
「何でもないわ。ちょっと、嫌なことを、思い出しただけ」視線を逸らして外を見る。
「泣きたいときは、我慢しないほうがいいぞ」少し間をあけ「明日は、何時の船に乗るんだ?」
「……午前十時二十分発の船よ」
「行き先は?」
「それは……」
「行き先はどこなんだ?」
「……サウスアーネット」
「亜熱帯のリゾート地か。チェックアウトは?」
「……十時には、出ようと思ってる」
「わかった」
キラのグラスが空いているのに気付くと「もう少し飲むか?」
「いえ、いいわ。ちょっと、飲み過ぎたみたい」
「部屋に戻るか?」
「……ええ」立ち上がるキラがよろける。
「オイ! 大丈夫か?」慌てて支えると「参ったわ。これくらいで酔うなんて」
「疲れてるんだ」
少しふらつきながらラウンジを出て、エレベーターホールに行くと壁に寄り掛かる。
「大丈夫か?」
「……ちょっと、きつい」
「座ってたほうがいいんじゃないか?」
「……大丈夫」
「無理しないほうがいいぞ」
そこへエレベーターが来た。
「歩けるか?」
支えながら乗ると「女の酔っ払いなんて、みっともないわね」
「しゃべるな」
目的の階に着いてエレベーターから降りると、キラの部屋の前までいく。
「ここで、いい」
「ベッドまで行けるか?」
「這ってでも、行く」
「無理するなよ」
「……大丈夫」
彼女が部屋に入り、鍵を閉める音を聞くと、ショウも自分の部屋へ入った。




