31-2 広がっていく亀裂
「彼女たちは、みんなと楽しく騒ぎたいだけなんだよ。ここに来るまで、大変なことや辛い目に遭ってきたそうだ。それを忘れようとしてるんだよ」
「そのこともあるのかもしれないけど、彼女たちが真剣なのは確かよ」
「お前こそなに言ってんだよ」
「わからないの? 女性の扱いに慣れてるからわかってると思ってたけど」
「あのなあ」
「わからないのなら教えてあげる。彼女たちは憧れだけでショウを見てない。本気よ」
「だから、俺にどうしろと言うんだよ。彼女たちと真剣に向き合えとでも言うのか? そんな気なんかないぞ」
「だったら、誤解されないように一定の距離を作るのね。今の状態を放置してたら、いずれ取り返しのつかない事態になるわよ」
「ちゃんと作ってるつもりだぞ。だからって、お前も俺との距離を作ることないだろう?」
「彼女たちを刺激して問題が起きたら大変じゃない。そうならないように未然に防いでるのよ」
「……」
「いいじゃない。それで、何も起こらないんだから」
「本当に、お前はそれでいいと思ってるのか?」
「いいもなにも、他に何か手があるの?」
「……」
「プライベートまで口を挟むつもりはないけど、とばっちりはごめんよ」
「わかったよ!」
ショウが来た道を引き返していくと『いいんですの?』ウィルシーが顔をだす。
「……いつまでも、一緒にいられないでしょう?」
『でも、彼はあなたの正体を知ってますわ』
「彼は今、忘れてたものを思い出しかけているのよ」
『忘れてたもの? それは何ですの?』
「普通の生活よ。仕事して、気の合う友人とお酒を飲んで、女性と話をするごく普通の生活」
『なぜ、そんな事がわかりますの?』
「ナディアたちと話してるショウはとても楽しそうだわ。そんな彼らを見てて、ふと気付いたの。日常よく見かける光景だって」
『……そうですの』
「私と一緒に行動するようになってから、そういう生活と離れてたから」
『でも彼は、あなたと行動することがどういうことか、理解されていますでしょう?』
「楽しいことは、そうそう捨てられるものじゃないわ。そういう生活をしたことがあれば、なおさら思い出すでしょう? 彼が普通の生活に戻りたいのなら、私は止めることができない。だって、彼は……人間……なんだから……」
『……これから、どうなさるおつもりですの?』
「一人でやるしかないでしょう? もともと私たちは一人で行動してたんだから」
『ラル……』
「情報を聞きたいわ。わかったことを教えて」




