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シルバーフェニックス戦記 ~護るべきものは~  作者: 夏八木 瀬莉乃
第六章 大陸にある保護団体
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29-1 すれ違っていく関係

 

 次の日から、台風でも来たかのような強い風と叩きつける雨に変わっていった。


「エミアが言った以上にひどい降りね。どんな雨雲を持ってきたのかしら」


 ラルは療養所の中にある休憩室に来ていた。

 窓際に立って外を眺めている。


「ここが安住の場所の一つね」


 ジム室での一件から、ナディアたちの行動が表面化してきていた。

 ラルが自室から出ると、数名の女性があとを付けてくるのだ。


「ショウと接触させない気なのね」


 とはいえ、彼とは部屋が隣同士なので、彼女たちが気になるのはわかる。

 ラルも()めごとを起こしてここに居られなくなったら困るので、気を遣って行動する羽目になった。


 今、この場所から離れるわけにいかないのは、療養所にいる彼らの体力を回復させて、王国へ連れて行かなければならないからだ。


 しかも、数が激減しているというラルと同じ年くらいの女性が、シンシアを含めて三名いるのだ。彼女たちを見捨ていくことは絶対にできない。


 女性が減れば人口が減る。一旦人口が減ると、元の数に戻すには長い年月がかかる。

 そして、彼らの人口が減れば人間界の自然のバランスが崩れる。そうなったら、きっと争いが起こるだろう。


 裕福な生活に慣れてしまった人間の中の欲にかられた連中が、きっと黙っていない。

 そして、彼らの人口が戻ったとしても、きっと人間界は平和な世界に戻らないだろう。

 長い間、不公平な時代が続くことは容易に想像できる。


 しかし、ラルにとって人間界がどうなろうと知ったことではない。むしろそうなって、自分たちが苦しめられてきた罰を受ければいいとさえ思っている。


 とはいえ、今は自分の仲間を見捨てることはできない。だからこそ、ラルは怒りたいのを押さえて気を遣っているのだ。


 シンシア以外の療養している二名の女性は、衰弱した体力を戻すことと、閉じ込められていたときの恐怖感を忘れようと頑張っている。


 その彼女たちにとって、ラルの存在はとても重要だ。

 キラのメンバーがいるということは、ここに居れば身の安全が保証されるということだからだ。


 ラルが顔を出すようになってから、彼女たちの表情がだんだん明るくなっていくのを、彼らのケアに(たずさ)わる者全員が認めている。


「さすが元PFS局員ね。これからも協力してほしいわ」彼女たちの担当医が嬉しそうに話す。

「私でできることは何でもしますから、何でも言ってください」


 ラルは、幽閉されていた仲間が引き起こす症状についての資料も作りはじめていた。

 前に取り寄せたのは代表されるものだけだったので、今回、きちんとした資料を作ろうと思ったのである。


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