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シルバーフェニックス戦記 ~護るべきものは~  作者: 夏八木 瀬莉乃
第六章 大陸にある保護団体
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28-1 別の戦いの予兆

 

 翌日の午後、ラルは体を動かしてさっぱりしようと、居住区棟の地下一階にあるジムへ向かっていた。


「あの人だかりは何?」

 受付カウンターの奥にある広い休憩室からジム内が見られるようにガラス張りになっているのだが、そのガラスの前にたくさんの女性が群がって騒いでいる。


(何か面白いことでもやってるのかしら?)


 彼女たちの後ろへいって中を見ようとしたが、背が高いほうではないので天井しか見えない。

 仕方がないので彼女たちの会話に耳をそばだてた。


「カッコイイ! アアッ、あのタオルが欲しい!」

「あのジュースはチェックよ!銘柄を確認しなきゃ!」

「私の差し入れ、受け取ってくれるかしら?」

「私もジムに通うわ!」と言って、数名の女性が受付に走っていく。


(どうやら、彼女たち共通のお目当てがいるらしいわね)


 視線をガラスに戻すと、一番前にナディアが陣取っていることに気がついた。


(あら、彼女もお熱を上げてるのね。お目当ての人は誰なのかしら?)と思ったとき、彼女たちが一斉に動くので邪魔なラルは思いっきり後ろへ突き飛ばされ、尻もちをついてしまった。


「いったーい!」


 普通ならここで文句を言うところだが、あまりにも意外なシーンが目の前で展開しているので、尻もちをついたまま固まってしまった。


「ラル。こんな所に座り込んで、何やってんだ?」ショウが目の前にしゃがんで声を掛けてくる。「座るなら椅子に座れよ」


「あ、うん」

「ああ、これから本館のラウンジへお茶を飲みに行くけど、来るか?」

「……うん」

「じゃあ、シャワー浴びてくるから待ってろよ」

「……うん」


 ショウが奥のロッカー室へ消えると、突然、ゾッとするような視線を感じ、目の前に数名が立ちはだかる。


「ラルさんは運動をされにいらしたんですよね?」ナディアが女性たちの前に出てくると、笑顔で話し掛けてきた。


「エ? ええ」

「それでは、彼と一緒にお茶を飲みに行けませんね?」

「あ……そう、ね」


「それでは、ショウ様が出てらしたらお断りしてください!」ナディアの後ろにいる女性が前に出てくると、他の女性たちも「私たちがショウ様とお茶を飲みに行きます!」

「そのためにずっと待ってたんです!」と次々に言いだすので「ショウ……様?」


「お断りしてください!」

「ショウ様を独り占めしないでください!」

「私が、ショウを、独り占め、してる?」


「いくら仕事のパートナーでも、プライベートまで拘束しないでください!」

「私が、ショウを、拘束、してる?」

「そうです!」

「エッ?」


「とにかく、ショウ様が出てらしたらお断りしてください!」

「……はい」


 返事を聞くと安心したのか、彼女たちの表情が和らぐ。

 ラルは、何が起きているのか理解できず、ポカンとした顔をして座っていた。


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