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シルバーフェニックス戦記 ~護るべきものは~  作者: 夏八木 瀬莉乃
第六章 大陸にある保護団体
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25-3 マーガの森に起こる異変の原因

 

 この話を聞いたとき、ラルには思い当たることがあったので、テッドと別れた後、印の付いている道を通って湖へ向かった。


 その湖はとても深い青色をしていたので、岸に近いところから急に深くなっているということがわかる。

 そして、湖の周りに生えている木々が何本もの(つた)を湖面に降ろし、ブラインドを作っていた。


 湖畔にラルが立つと岸から三メートルくらい先の水面が光りだし、そこから女性が顔を出した。

 彼女は紺色の長い髪を編み込んで左肩から前へおろし、キラキラ光る真珠のようなネックレスを三重にして、首から掛けている。


『お久しぶりですわね、ラル』

「ウィルシー! なぜあなたがここにいるの?」


『わたくしたちも、されるがままではいられませんもの』

「だからって、ここは敵地なのよ。それも中枢でしょう?」

『知ってますわ。ですから来ましたのよ』


「……そう、この森を操って、入ってくる人間を追い返してたのはあなたね?」

『そうですわ』


 彼女はフロス アクアエ(水の精霊)の女王。

 シンシアが水の貴族の代表側だとしたら、ウィルシーはフロス アクアエ側の代表。


「シンシアが本部で療養してることは知ってる?」

『もちろんですわ。それで、お加減はいかがですの?』

「さっき会ってきたけど、元気そうよ」

『そうですの。よかったですわ』ホッと笑みを漏らす。


「あなたがこの森を操ってるのなら、聞きたいことがあるの。アディたちをここに居つかせたのはなぜ?」

『わたくしたちは影の存在ですわ。ですから、表に出られないわたくしたちの代わりになる人間が必要でしたの』


「あなたのお眼鏡にとまったのが彼だった」

『ええ。彼は大きな力を持っていますわ』

「そうね。それは認める」


『わたくし、いつかキラのメンバーの方が来られると思ってましたのよ。でも、それがあなただとは思いませんでしたわ』

「私も、こんな絡繰(からく)りがあるとは思わなかったわ」


『この森はわたくしたちが守りますわ。ですから、何も心配なさらずに動いてください』

「そう言ってくれると心強いわね」

『でも、無茶だけはなさらないでくださいね』

「わかってるつもりよ」



 その後、基地へ戻ったラルは、森の絡繰りをショウには話さなかったが、彼は彼女が話すまで聞かないような節があった。時々「どうしてここには他の人間が入ってこないんだろうな」と聞くことがあったからだ。


「テッドが調査してるから、そのうちわかるわよ」ラルはいつもこう答えていた。



 数日後、ラルが湖へ行くとまた湖面が光り、ウィルシーが顔をだす。


『浮かないお顔をなさって、何かありましたの?』


「ちょっとイヤなことがあっただけよ」畔に座ると『早くご機嫌を直してくださいね。でも、来てくださってよかったですわ。お知らせしたいことがありますの。数日後に雨が降りますわ。二週間くらいと聞いてますの。ひどい雨になりそうなんですって』


「まだ気流は流れてるの!」

『ええ』ウィルシーが空を見上げると、薄い衣を宙に漂わせ、スカイブルーの髪をなびかせた女性が浮いていた。


「エミア! あなたも来てたの!」


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