23-1 療養所の問題
すこし沈黙があった後「ここはいい環境だな」部屋の中を見回す。
「一番金を掛けたところだ」
「掛けてるだけあるよ。彼らのことをよく考えてる」
「そういえばショウたちは、いろんな幽閉場所を見てきたんだったな」
「ああ。とても大切にしてるとは思えない場所が多かったね」
「あいつらは、彼らを物としてしか見てないからな」
「……ああ」
その時、部屋に置いてある時計がメロディを鳴らしはじめた。
「おっと、昼寝の時間だ」
タキがシャスタを抱き上げると隣の部屋へ行き、小さなベッドの一つに寝かせる。
ラルとショウもそれぞれ連れてくると寝かしつけ、全員が寝ると、保父・保母さんたちの休憩時間になる。
「一緒にお茶でもいかがですか?」ベテランの保母さんが声を掛けてくるので「ご迷惑ではありませんか?」
「全然。どうぞ」と言われて隣の休憩室へついていく。
勧められた椅子に座り「最初は大変だったんじゃないですか?」向かいの三十代くらいに見える保父さんに聞くと「僕たちは赤ちゃん担当なので、特に大変とは思いませんけど、他のところの担当さんは、いろいろと苦労があるみたいですよ」
「他のところ?」
「きっちりとではないんですが、年齢で区切ってあって、それぞれに担当が付いてるんです」
「では、年齢が上に行くほど、溝が埋まらないだろうな」とショウが言うと「はい。ここにきて何ヶ月も経つのに、一向に打ち解けてくれない方も数名いますので、その方たちの担当さんは苦労してるみたいです」
そこへアディが入ってきた。
「ここにいたのか」
「あの子の容態はどうかしら?」
「まだ何とも言えないと言ってたよ」
「……そう」
「ラル、そろそろお暇しようか」ショウが立ち上がると「そうね。ご馳走さまでした」
「こちらこそ、手伝っていただいて助かりました」
「じゃあ、タキ」
「ああ」軽く手を上げる。
アディと一緒に部屋から出ると「これ、使ってくれ」ショウが資料を渡す。
「ありがとう。助かるよ」
「ねえアディ。他のところも見せてもらっていいかしら?」
「いいよ。案内しよう」先に歩いていく。
休憩室から先も同じような部屋が続き、奥へ行くごとに療養している彼らが大きくなっていく。
(シンシアはこの奥の部屋にいるかもしれないわね)
通路から各部屋を見ていくと、中の彼らはさっき保父さんが話したとおり、警戒する目付きをした顔が多く見られるようになった。
「PFSの施設にいた彼らと同じ目をしてるよ」
「そうだろうな。僕たちから見ればPFSは別の保護団体だけど、彼らから見たら、どちらも人間が支配してるんだ。敵なのは変わらないだろうね」アディはため息交じりに話し「僕たちがいくら違う団体だと思っても、彼らから見たらどちらも同じものだから」




