22-3 次の手の内
「すごい場所に隠しドアを作るのね。でも、一階に療養所への通路を作るなんて、危険じゃない?」
「運ばれてきた彼らがどんな状態か、君も知ってるだろう?」速足で歩きながら答える。
「すぐにでも治療を始めないといけない状態にあるのに、あちこち連れまわすわけにいかないじゃないか。
もちろん、君の言うように危険度が高いことは承知してる。
だからこそ、こうやってカムフラージュして、さらに監視を強化してるんだ」
蛍光灯の無機質な明かりの中を進んでいくと、明るい日の光が差し込んできた。
「窓があるわ。どうして?」
その窓を通して向こう側に木々が見える。どうやら隣接している森のようだ。
そのことから考えると、車の出入り口とは反対側の崖の外に出たらしい。
「ちょっと! こんな所に窓があったら見付かってしまうじゃないの!」
「大丈夫。外からは見えないよ。特殊ガラスでカムフラージュしてあるからね」
「今はそんな話をしてる場合じゃないだろう?」ショウが割って入ってくるので「そうだったね」アディに付いて通路を進むと、窓があった場所から壁際に植物が置かれ、壁の色も自然に似せて土色に変わっていた。
「ずいぶんと凝ってるのね」
「ここが一番気を遣ったところだからね」
それからすぐに別の建物へ入った。
中はふんだんに光が取り入れられ、植物が気持ちよさそうに葉を広げている。
「まるで森の中にいるようだな」周りを見るショウ。
「落ち着くわね」チェックしはじめるラル。
「君たちにそう言ってもらえると嬉しいよ」アディは一旦笑みを浮かべるが、あるドアの前に来ると厳しい顔に変わった。
「この中にいるのね?」
「ああ」ノックするとドアが開き、顔を出した看護師が彼の顔を見ると道をあける。
中に入ると、ガラス越しの隣の部屋に、ベッドに横になった五・六歳のシルバーフェニックスの女の子が、無菌室にするためかガラスケースのような中にいて、酸素吸入器を付けて苦しそうに息をしていた。
するとショウが「同じ症状を、PFSにいたときに見たことがある」と言うので「本当か? で、治療方法は?」アディが聞き急ぐとショウは首を横にふり「……助け、られなかった……」
「そんな……」
「大丈夫よ。送られてきた資料に治療方法が載ってたわ」持ってきた資料をめくって該当部分をアディに渡し「アレルギーよ。空気清浄に問題があったところに閉じ込められてた彼らの中に、肺に異常が起こったために高熱を出して、湿疹を出す者がいると書いてある」
「急いでドクターを呼んでくれ!」アディが側にいた看護師に声を掛けると「彼女と一緒に閉じ込められてた彼らも検査して。これだけ湿疹を出すほど、環境が悪かったということなんだから」
「すぐ手配する」




