21-4 グループからの接触
「君の誘導尋問に引っ掛かったのかな?」
「ええ。とても不可解な人だったから気になったの。タキも彼には興味を持ってたわ」
「もちろん」と答えると「俺は全然わかんなかったけどな」
「カイには無理だ」とタキに言われ「何だよ、その言い方は」口を尖らせて文句を言う。
「カイは、ビールのうまさですっかり彼を見る目が変わってしまったからな」
「悪いなあ。じゃあ、ショウも爺さんを疑ってたのか?」
「ああ」
「チェ! 何だよ。俺だけ除け者かよ」
「俺は、ラルに止められて屋敷内を調べるのを断念したんだ」とタキが言うので「私が別館内を見回ったのは本当よ。そのあとで彼の正体がわかったの。そして、基地へ戻るまで、この事はタキたちに話さないようにと言われたのよ」
「それで、この手紙を渡されたというのか?」テーブルの上にある例の手紙を指すので「そうよ。約束を守ることで向うの信用が少しでも得られれば、それに越したことはないでしょう?」
「確かにそうだが……」
「不満はわかる。でも、あの時はああすることが一番いいと思ったのよ」
「では、向こうのこちらに対する印象は、その手紙に書かれてることより少しはマシだというのか?」
「それは難しいね」アディが話に入ってくる。
「なぜ?」怪訝そうにタキが聞き返すと「向こうは人間をひと塊で見てる。いくら俺たちが味方だと言っても、今の段階では信用してくれないだろう。信用してないから、証拠を消すために爺さんは屋敷を解体したんだ」
「なるほどなあ。屋敷を解体した意味はそこにあるのか」納得するカイ。
「本当に、アディにはウソが吐けないわね」ラルが困った顔をすると「君がこの手紙をもらったと聞いて、裏があると思ったんだ」
「なんで?」
「さっき、タキから今回の報告書をもらって読んでたとき、屋敷に行ってからの君の行動が、お爺さんを庇うものだったからだよ。そこへ手紙を受け取ったと聞いて、何かあると思ったんだ」
「ご推察のとおりでした。でも、それだけよ」
「十分だよ。これで、今現在の向こうの動きが予測できる」
「どういうふうに?」
「君も予測できるだろう?」と言って話さないので「ケチ」と言い返すと、苦笑して「正直言って、これから分析するところなんだ。今聞いた、君の話も組み入れないといけないからね」
「じゃあ、予測できたら教えてね」
「その時は、君の予測も教えてもらいたいね」
「私の予測なんて、参考になるかしら?」
「もちろん。君たちの見解は大いに参考になるよ」そう言って、口数の少ないショウを見る。




