20-4 水面下の保護団体
「私がPFSを抜けたのは、と言うより、私がPFSに加入したのは、と言ったほうがいいわね。内部事情を調べるためよ」
「内部事情?」
「そう。PFSが保護した彼らをどう扱ってるのか。回復した彼らをその後どうしてるのか、探るためよ」
「ということは、キラがPFSに入る前から、グループは存在してたのか」
「狩りが始まってすぐにできたわ」
「そんなに早くから!」
「表面化してなかっただけ」
「じゃあ、PFSができたとき、協力してくれればよかったのに」
「それは無理よ」
「なぜ?」
「できない理由があったことと、保護団体は一つじゃなきゃいけないことはないでしょう?」
「確かに幾つあってもいいと思うけど、協力できなかった理由とは何だ?」
「できない理由があった」
「それは?」
「まったく、どうしてこうしつこいのかしら。できない理由があったということでいいでしょう?」
「よくない」
「もう! しつこい!」
「隠しごとが多過ぎるんだよ」
「話さなくてもいいことでしょう?」
「できなかった理由ぐらい話せるだろう? それとも、話せない重要な理由でもあるのか?」
「……活動形式がまったく違うのよ」
「どう違うんだ?」
キラは苦虫を噛み潰したような顔をして「私たちは、バラバラに動いてるの」
「バラバラに? そうか。個人で動いてるのか。じゃあ、基点となる本部があって、そこから指示が出るんだ」
「……まあね」
「どの位の規模なんだ?」
「さあ。今はどの位いるのかしら?」
「で、どうしてPFSを抜けたんだ? もう調べなくていいのか?」
「代わったのよ。今は別のメンバーが監視に当たってるわ」
「戻されたのか?」
「いいえ。アルドの事件を解決したら、別の任務に付くことになってたの」
「俺が一緒だったからじゃないのか?」
「あのままPFSに残ることになってたら、一緒にやらなかったわ」
「そうか。で、今の仕事は?」
「あんたはグループのメンバーじゃないのよ。そんなこと話せるわけないでしょう?」
「俺のこと、グループに報告したんだろう?」
「もちろんよ」
「返事はノーだったわけだ」
「そう」
「なぜ? 俺がPFSにいたからか?」
「いいえ」
「じゃあ、どうして?」
「何度も言ってるでしょう? 入れないって」
「またそれかよ。なんで理由が言えないんだよ」
「私が採用を決めるわけじゃないのよ。グループが認めてくれなければ、どうしようもないでしょう?」
「俺は諦めないからな」
「もう一度言うわ。PFSに戻りなさい」
「ヤダね」
「……しょうのない人ね」説得を諦めて席を立つと「俺が払う」伝票を取るので「いいわよ。この前奢ってもらったから」伝票を取り、レジへ向かう。




