15-2 任務開始 出発
来た道を戻る途中にある迂回路に入ると、行きよりひどい上下運動が待っていた。
「こんなんじゃ着くまで身が持たないわ! カイ! 何とかしなさい!」
「そんなこと言われたって、はい、わかりましたなんて言えるかよ!」
「これでも道なのかよ!」ショウが舌を噛みそうになりながら怒鳴ると「馬に乗ってると思えばいい」冷静なタキは、平然とした顔をして助手席に座っている。
「こんな揺れ方をする馬がどこにいるのよ!」
一時間後、休憩を取った。
「この先も、こんな状態が続くの?」ジープから降りても揺れている感覚が取れないラルが、地図を見ているタキに聞くと「もう少し行ったら平たんな道になる」
「もう少しって、どのくらいなんだ?」グッタリしているショウに「二十分くらいだろう」
「道があるだけマシだぜ。俺なんかこの前、湿地帯を半日歩いたんだぞ」
「そっちのほうがいい」と言うラルに「蛭やらわけのわかんない虫が、ゾロゾロ脚を這い上がってきてもか?」
「どっちもヤダ」
「行きやすい場所に彼らを幽閉するはずないだろう。向こうも必死なんだ。それだけ苦労が伴うことくらいわかってるだろう?」タキが甘い考えのラルに注意すると「すみませんねえ」口を尖らす。
二十分休憩すると、再び上下運動する道を進む。
今回ラルは大人しかった。と言うより、文句を言う気力がなかった。
しかし、タキが言ったとおり、三十分を過ぎると道は平たんになり、スムーズに進むようになった。
「お二人さん、生きてっか?」後ろに向かってカイが声を掛けるが、当然、返事はない。
「早く体調を治せ」あくまでも冷静なタキ。
そして、午後五時を過ぎるころに、目的の湖近くに着いた。
ジープから降りたラルとショウは、近くにある大きな岩に腰掛ける。
「出発は午後九時だ。それまでに体調を戻すんだな」そう言うとタキは周辺の確認に向かい、カイはジープの点検を始めた。
「なんであの二人は平気なのかしら?」不思議で仕方がないラル。
「感覚機能が壊れてるんじゃないか?」とショウに言われ「きっとそうね」納得してジープの点検をしているカイを見ると「まだ、車に乗ってる気分」
「俺たちの感覚機能も壊れ始めてるんだよ」
「……四時間で、治るかしら?」
「……さあな」
ジープの点検が終わったカイが夕飯を作り始めたころ、タキが見回りから戻ってきた。
「どうだった?」
「調べどおりだった」と答え、岩の上で伸びている二人に「少しは良くなったか?」
「酔い止めの薬を持ってきといて、よかったわ」少し復活したラル。
「何とか」苦笑するショウ。
「それは何よりだ。あと一時間で作戦開始だから、準備を始めてくれ」タキがジープから荷物を出しはじめる。




