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シルバーフェニックス戦記 ~護るべきものは~  作者: 夏八木 瀬莉乃
第六章 大陸にある保護団体
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15-2 任務開始 出発

 

 来た道を戻る途中にある迂回路に入ると、行きよりひどい上下運動が待っていた。


「こんなんじゃ着くまで身が持たないわ! カイ! 何とかしなさい!」

「そんなこと言われたって、はい、わかりましたなんて言えるかよ!」


「これでも道なのかよ!」ショウが舌を噛みそうになりながら怒鳴ると「馬に乗ってると思えばいい」冷静なタキは、平然とした顔をして助手席に座っている。


「こんな揺れ方をする馬がどこにいるのよ!」



 一時間後、休憩を取った。

「この先も、こんな状態が続くの?」ジープから降りても揺れている感覚が取れないラルが、地図を見ているタキに聞くと「もう少し行ったら平たんな道になる」


「もう少しって、どのくらいなんだ?」グッタリしているショウに「二十分くらいだろう」

「道があるだけマシだぜ。俺なんかこの前、湿地帯を半日歩いたんだぞ」


「そっちのほうがいい」と言うラルに「(ヒル)やらわけのわかんない虫が、ゾロゾロ脚を這い上がってきてもか?」

「どっちもヤダ」


「行きやすい場所に彼らを幽閉するはずないだろう。向こうも必死なんだ。それだけ苦労が伴うことくらいわかってるだろう?」タキが甘い考えのラルに注意すると「すみませんねえ」口を尖らす。


 二十分休憩すると、再び上下運動する道を進む。

 今回ラルは大人しかった。と言うより、文句を言う気力がなかった。


 しかし、タキが言ったとおり、三十分を過ぎると道は平たんになり、スムーズに進むようになった。


「お二人さん、生きてっか?」後ろに向かってカイが声を掛けるが、当然、返事はない。

「早く体調を治せ」あくまでも冷静なタキ。


 そして、午後五時を過ぎるころに、目的の湖近くに着いた。

 ジープから降りたラルとショウは、近くにある大きな岩に腰掛ける。


「出発は午後九時だ。それまでに体調を戻すんだな」そう言うとタキは周辺の確認に向かい、カイはジープの点検を始めた。


「なんであの二人は平気なのかしら?」不思議で仕方がないラル。

「感覚機能が壊れてるんじゃないか?」とショウに言われ「きっとそうね」納得してジープの点検をしているカイを見ると「まだ、車に乗ってる気分」


「俺たちの感覚機能も壊れ始めてるんだよ」

「……四時間で、治るかしら?」

「……さあな」


 ジープの点検が終わったカイが夕飯を作り始めたころ、タキが見回りから戻ってきた。


「どうだった?」

「調べどおりだった」と答え、岩の上で伸びている二人に「少しは良くなったか?」


「酔い止めの薬を持ってきといて、よかったわ」少し復活したラル。

「何とか」苦笑するショウ。


「それは何よりだ。あと一時間で作戦開始だから、準備を始めてくれ」タキがジープから荷物を出しはじめる。


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