10-1 任務の調査
食後、オヤジさんに借りた馬車で、村の中を見て周ることになった。
「いい天気ね。でも、シミができたらイヤだわ」馬車の荷台に座るラルが、揺れながら帽子を深くかぶりなおすと「揺れるのは、当分の間、勘弁してほしかったんだけどな」ボヤくショウに「ジープよりはマシよ」と言いつつ腕に日焼け止めを塗る。
「しかし、こんなことして大丈夫か? 俺たちはなるべく目立たないほうがいいんだぞ」
「オヤジさんが言ったことを忘れたのかよ。俺たちは休暇を利用してここに来たんだぞ。それなのに、家の中に閉じこもってたら余計怪しまれるだろう?」手綱を引くカイ。
「休暇中らしく振る舞うとしたら、最初は村内見物だと昨夜、夕飯のときに話し合ったんだ」カイの隣に座っているタキが説明するので「なるほど。俺たちはいなかったから、知らなくて当然か」
「そこんところ、頭に入れて行動してくれよ」
「かしこまりました、隊長」とラルが言うので「隊長はラルだろう? 誰も勝てねえんだから」
「どういう意味で、勝、て、な、い、と言ってるのかしら?」カイの耳元で聞くと「そ、そりゃあもう、行動力といい、頭の回転の早さといい、度胸といい、どれを取っても、リーダーになる素質があると思ったからだよ」
「まあ、そんなに褒めてくれるの?」
「もっちろん!」と言ったあとに「恐ろしいってのもあるんだけどさ」と呟くと「な、あ、に?」にこやかに言うが、ラルの腕はカイの首に回っている。
「なんでもありまっせーん!」
「カイ。頼むから、機嫌を損ねるようなことを言わないでくれ。あとが大変なんだぞ」
「ちょっと、それ、どういう意味?」ショウを睨むと「言った奴が墓穴掘ってどうする」冷たく言うタキ。
「まったく、あんたたちは女性の扱い方を全然知らないのね。紅一点なんだから、もっと大事にしなさい」
「こっちの扱い方を気にしてほしかったりして」カイが呟くと「誰の扱い方ですって?」再びカイの耳元で囁くので「これから十分に注意したいと思いまーす!」
「お前に任せる」無責任なことを言うタキに「俺にだけ重荷を背負わせる気かよ!」
「お、も、に?」
「なんで俺だけ責めるんだよ! タキやショウだって言いたいこと言ってんじゃねえか!」
「だって、カイを揶揄うと面白いんだもの」と言われ、言葉を無くす。
ようやく、自分がオモチャにされていることに気付いたらしい。
「気に入られたらしいな」内心ホッとしているタキ。
「すげえ複雑な心境」これから自分がどう扱われるのか、心配になってきたらしい。
「あら、かわいがってあげるわよ」カイの頭を撫でると固まるので、タキが「手綱さばきだけはしっかりしてくれ」
「こういう場合、俺たちが付いてるから大丈夫だ、とか言ってくれんじゃねえの?」
「相手が彼女でなければ言っただろう」




