8-2 組織での救出作戦
「なぜ一緒にいないの?」
「俺たちのやってることは常に危険が付きまとうだろう? 妹を巻き込みたくないんだよ」
「そう。いいお兄さんね」
「他の家族はどうしてるんだ?」
「俺の家族は、妹一人だけだ」
「……タキは?」
「俺は一人だ。家族はいない」小声で言い返すので「何かに巻き込まれたのか?」
「……隣に住んでた家族の父親がシルバーフェニックスだったんだ。
ある日、その父親が狩り人に見つかって、俺の家族が匿って逃がそうとしたんだが、多勢に無勢で、父親以外、隠匿罪とかなんとか文句つけやがって……その場で、銃殺された。
俺は仕事で家を離れてて、仕事先で連絡をもらって、戻ったときは、すでに全員棺桶の中だった。
それがキッカケでここに入った」
「組織には、タキのような境遇の人がたくさんいるんだよ」
「悪どい狩り人がいると聞いてるが、聞きしにまさる酷さだな。一人残ったのか。悪いこと聞いた」ショウが謝罪すると「俺の家族は全員ダメだったが、向こうの一人娘が生き残った」
「本当!」ラルが身を乗り出すと「向こうの母親が自分を盾にして守ったから、かすり傷程度で済んだんだ」
「その子はどうなったの?」
「俺が引き取った。今は組織の保護施設にいる」
「その子だけでも助かったのは救いね」
「信じられねえよ。また一歳にもなってなかったんだぜ」
「そうなの……名前は?」
「シェスタだ」
そこへ、ミシェルがポトフを持ってきた。
翌朝、村をあとにしたラルたち一行は、その日の夕方に目的のマウスセット村に着いた。
「当分の間、ジープには乗りたくないわ」ラルが腰を叩きながらジープから降りると「確かに」反対側から降りるショウが伸びをする。
「あと十回くらい乗れば、尻の皮が厚くなって、どうってことなくなるよ」カイが平気な顔をして荷物を降ろすので「それだけは、絶対に、避けたいわ」荷物を持つと、情報部員として調査している男の家に入る。
その家は、掃除をするのが大変だろうと思うくらい大きく、豪邸と呼ぶにふさわしかった。
「長距離をお疲れ様」情報部員の中年の男が、ジープが停まる音を聞いて出てくると声を掛けてきた。
見た目にはどこにでもいそうな、人のいいお父さんに見える。
「急に訪ねてきて、村の人達に怪しまれないか?」心配するショウに「君たちは、私の遠い親戚とその友達と言ってある。心配することはないよ」にこやかな顔をして答え、家に招き入れる。
「どうぞ、座ってください」
応接間に通されたが、座るのが苦痛で立っているラルに、奥のキッチンから出てきた女の子が声を掛けてくる。
「紹介しよう。娘のサナとマチだ」
二人ともまだ十代だろう。笑い顔にあどけなさが残っている。
「あの、奥様は?」
「妻は、五年前に病気で亡くなったよ」
「まあ、ごめんなさい。失礼なことを聞いてしまったわ」
「いや、構わないよ。いなければ不思議に思うからね」




