20-2 水面下の保護団体
「気付いてないのか?」
「気付くも何も、救出チームにいる私より、情報部にいるあんたのほうが彼らに付いて詳しいでしょう?」
「一般人よりはな。けど、俺よりもお前のほうが詳しいだろう」
「だから、どうしてよ」
「二度目に会ったのはアンジュのときだ」
「そうよ」
「次はメルディアたち。それからサーシュ」
「今回ね」
「三回とも、お前は同じことを彼らにした」
「助けたわ」
「そう。どうやって助けた?」
「忍び込んで、連れ出したわ」
「そして?」
「そしてって」
「逃げるとき、彼らの姿を変化させた」
「当たり前じゃないの。あの姿のまま、外へ連れ出すわけにいかないでしょう?」
「確かにな。そこでお前はあの金属片を使って彼らの姿を変えた。最初に使ったとき、あの金属片をどこから手に入れたのか聞いたよな」
「PFSの研究室からと答えたわ」
「確かに研究室で作ってた。同じ形の金属片を。しかも、試作段階で止まってて保留になってる」
「完成までこぎつけるにはまだ掛かるでしょうね」
「あれは完成しない」
「なぜ?」
「お前が持ち込んだダミーだからだ」と言ったところで、キラの表情が微妙に変わる。
「ちょっと、何を言いだすの?」
「気付かれないとでも思ったのか? 研究室のコンピューターにアクセスした記録は、情報部のサブコンピューターに記録されるんだ」
「ヘェ、そうなの」
「誰がアクセスしたのか、カメラに映る映像も記録される」
「コンピューターに内蔵されてるカメラのこと?」
「いや。室内に設置されてる隠しカメラだ」
「隠しカメラ?」キラの表情が動く。
「コンピューターを起動させたら隠しカメラが作動するよう、俺が内緒で仕掛けておいたんだ。コンピューターに内蔵されてるカメラは細工されてて誰も映ってなかったが、隠しカメラには、お前によく似た奴が、あの金属片のデータを入力してる映像が記録されてた」
「私によく似た、ね」
「どこまでシラを切りとおす気か、楽しみだな」
少し沈黙があったあと、キラは頭を抱え「そんな盲点があったなんて、知らなかったわ」
「まあ、そんな事しなくても、あの金属片の説明を聞いた時点でおかしいと思ったよ。
彼らの身体的特徴が詳しくわからないのに、PFSの研究室があんなものを作れるはずがない。
アンジュに使った時点でお前がどういう人物なのか興味を持ったが、研究室で作ってると答えたとき、さらに疑惑は大きくなった」
「あんたが能天気に振舞ってたのは、私が警戒しないように、そして、近付くためだったのね?」
「まあ、それもあるけど、半分は地だな」
「情報部も、ずいぶんと間の抜けた奴を使ってると思ったのは間違いだったわ。とんだ食わせ者を使ってたのね」
「お褒めに預かり、光栄ですな」
「能天気な奴だから、そこまで頭が回らないと思ってたわ」
「そこまで抜けてないさ。さて、そっちの番だぞ。なぜPFSを抜けた」
キラはどう話を進めていこうかしばらく考え「その前に、私のいるグループに付いて、どういうものだと考えてる?」
「……そうだな。やってることは同じだと思う。彼らを助けることと、ケアの面もな。違うのは、お前のいるグループのほうが彼らのことをよく知ってる点と、彼らがPFSより信頼してることだ」
「どうして信頼してるとわかるの?」




