5-3 もう一つの報告会
「聞かれたことは話した。今度はそっちの番だぞ」ショウがせっつくと「エッ? あ、ああ、そうだな。この情報は、南部エリアを管理してる支局のメンバーから、ある領主の通信を傍受したといって報告されたものなんだ」
「その報告を信用したのか?」
「その後、全領主がこの情報を入手していたらしいことがわかったんだよ」
「誰か情報をリークした奴がいるのか?」
「そうなるね」
黙り込むショウに「心当たりがあるんだろう?」カマを掛けるようにアディが聞いてくるので「心あたりがないから、どうやって全領主たちがこの情報を入手したのか、考えてるんだ。領主会というのかあるらしいから、そこで持ち出されたのか?」
「それで、情報元を突き止められそうか?」
「おかしなことを聞くな。元心理官なら、得意分野だろう?」
「もちろん考えたよ。でも、どうやら、僕たちの思考では解明できない領域での出来事らしい、という結論に達したんだ」
「解明できない領域?」
「僕たち人間が行ったことではないかもしれないと言ったほうがわかるかな」
「では、彼らが流したというのか?」
「僕は、人間業ではないかもしれないと言っただけだ」
「その言い方はズルいな」
「例えは悪かったかもしれないが、そうとしか言いようがないんだ」
「……不可思議な現象のようだということか?」
「そうそう、そんな感じがするんだ。ある情報を追っていくと、途中からまったく別の情報になっていたり、情報源を探ろうと発信元を辿っていくと、最初の人物に戻るとか。何の絡繰りだ? と思うようなことがあちこちで起こってるんだ」
「そうか……ここまでリーク元を隠す理由は何なんだ?」ますます混乱してくるので「もう少し情報がほしいな。穴だらけで予測するのも危ない感じがする」
「そうだね。継続して情報取集するよう指示するよ」ビールを飲むアディが携帯をポケットから取り出して、誰かにメールする。
その時、
「アディ、ちょっといいかしら?」
サラサラの長い髪をした二十歳くらいの女性が声を掛けてきた。
「ああ、何かな?」
「あの、彼を紹介してほしいの」と言ってアディの向かいを見るので「ああ、いいよ。彼はショウ。新しく加わった仲間だよ。ショウ、彼女はナディア」
「よろしく」ショウが声を掛けると「こちらこそ」ニッコリ微笑む。
「彼女はここのアイドルなんだよ」
「ヤダ、アディったら。そんなことないわ」
「かわいらしいお嬢さんだね」
「ああ、彼はジット。僕の古い友人だよ」
「初めまして」
「こちらこそ」
「この中のことについてわからないことがあったら、何でも聞いてくださいね」
「ありがとう」ショウが答えると「じゃあ、また」手を振ってラウンジから出ていく。
「どうやら、君のことが気に入ったらしいね」
「そうかな?」
「気を付けたほうがいいよ」アディが苦笑するので「どういう意味で?」
「すぐにわかる。じゃ、お先」グラスを持つと席を立つ。




