5-1 もう一つの報告会
この日の午後九時過ぎ、ラウンジでウイスキーの水割りを飲んでいるショウのところへジットがきた。
「同席しても構わないかね?」
「もちろん、どうぞ」右隣の席を勧めると、持ってきたショットグラスをテーブルに置く。
ラウンジは吹き抜けになっている中央ホールに面した四階にあって、カウンター席になっている吹き抜け側に座るとホール全体が見渡せる。
「ここはどうかね?」
「すごいところですね。とても岩山の中に建ってるとは思えません」
「ハハハッ。そうだな」
「アディはすごい人ですね」
「そうだろう?」
「力強い味方ができて心強いですよ」
「彼が一緒だから、私はこの大陸に残ることを決めたんだよ」
「そうなんですか。しかし、なぜ彼は狩り人のメンバーになったんですか?」
「私と同じだよ。引き抜かれたんだ。私が率いてた部隊に入ってきたんだよ」
「あとから入ってきたんですか?」
「そうだ。ところで、村を出発する日に何があったんだね?」
「何が?」
「なぜ連れのお嬢さんがあそこまで変わったのか、気になってね」
「ああ……驚かれたでしょうね」ため息を吐くと「アイツは催眠術が使えるんですよ」
「ホウ!」
「正体の分からない組織へ行くため、自己催眠を掛けて隙を作らないようにしたんです」
「以前にも同じような事があったようだね」
「……恥を話せと言うんですか?」
「恥? ぜひ聞きたいね!」興味津々の顔をするので「趣味が悪いですよ」ため息を吐くと「アイツと最初に会ったときは、お互いPFSにいたことを知らなかったんですよ。
二人してお互いを狩り人だと思ってたんです。
ある現場で会って、アクシデントが起きたんですがうまく逃げだした後、連れ出したシルバーフェニックスの女の子をどっちが引き取るかでもめて、アイツに催眠術を掛けられて、翌朝、見回りの警官に声を掛けられるまで、公園で突っ立ってたんです」
「アハハハハハッ!」
「だから恥なことだと言ったでしょう!」顔を真っ赤にして言い返すと「いや、申し訳ない」と言いつつも笑い続けるので「いいですよ。誰が聞いても笑いますから」
「そうか。相当手強い相手だったんだね」
「今、その時と同じなんですよ」
「ホウ」また興味のある顔をする。
「これからが怖いですよ」
「気持ちはわかるよ」
そこへ、アディが入ってきた。
「楽しい話でもしてたのか? 一緒にいいかな?」
「ではボックス席に移りましょうか」ショウが後ろのテーブルを指すと移動する。




