2-1 山の中の基地
ジープは右側に切り立った崖と、左側に鬱蒼と茂る森の間の道を走っていく。
「まさか、こんな所に道があるとは思わないわね」窓の外を見るラルが見上げると、左側から張りだした枝が道を覆っているため、空からこの道を確認することはできない。
そして、日が傾きはじめたころ、ポッカリあいた洞窟に入っていく。
「いよいよ到着かな」隣のラルに声を掛けると小さく頷く。
ライトを点けて暗い道を進むと突然前方がひらけ、巨大な空間に大きな建物が姿を現した。
「これはすごい!」ショウとラルが身を乗りだして前方を見ると「よくこんなものをこんな所に作ったな」
「それより、よくこんな場所を見つけたわね」
「でも、また未完成のようだな」
前方の空き地に段ボール箱などのゴミが山積みされている。
ジープが建物横にある駐車場の端で停まると、助手席のスタンが「荷物はそのままで、あとで運ばせる。貴重品だけ持ってきてくれ」車から出ると、建物から出てくる作業員たち数名に声をかけ「では案内する。付いてきてくれ」隣接する建物へ入っていく。
中は殆ど完成していた。
「どうやってこれだけのものを調達したんだ?」感心するショウに「各方面から人が集まってるんだ」答えるスタンがエレベーターに乗り込むと、最上階へ向かう。
扉上の階数パネルを見ると十階まで表示があるので「この中に十階建てのビルを建てたのか!」
「まあな」
目的の十階に着くと思った以上に明るく、一流企業のオフィスのような最新のフロアに、さらに驚く。
「ここが山の中に造られた建物の中とは思えないな」ショウが通路の奥を見ると、隣にいるラルは慎重に中を観察している。
そんな彼らを引き連れて、先頭を行くスタンが「執務室」と札が掛かっているドアをノックして中に入ると、会議室のようなコの字型に並べられた長机の奥で、巨大モニターに映るタイムテーブルを見ていた小柄な男がこちらを向く。
「やあ、よく来たね」どこかのアイドルのような爽やかな笑顔で声を掛けてくると「もっと遅くなるかと思ったが、早かったね」男と話していたジットが「大丈夫かね?」ラルに聞いてくる。
「ご心配をお掛けしました。もう大丈夫です」
「やっぱり、彼はあなたの知り合いだったんですね?」
ジットの向かいにいる彼は、ショウと大して変わらないくらい若い。
「ようこそ。アディと言います」
傍にきて手をだす彼の笑顔は人懐っこそうに見えるが、どことなく隙のない感じがする。
「ショウです。連れはラル」
「初めまして」
「こちらこそ」
お互い相手を観察するような目つきをする。




