1-2 本部への移動
今日もいい天気で日差しが強く、エアコンが効いている車内でしばらくは小高い丘が続く大地を上下しながら進み、隣の領地に入って最初の村に着くと、ここで一泊することになっていた。
「手回しがいいんだな。ちゃんと宿が取ってあるなんて感心するよ」
ショウがジープから降りると、宿屋から出てきた主人らしき中年の男性がスタンと何やら話はじめるので「どうやらここは、仲間が経営してる宿のようね」ショウの隣に立つラル。
「各地に仲間を派遣して、情報を取ってるんだろう」
ラルたちは話しおわったスタンに案内されて、宿屋に入ると二階の部屋へ通された。
「どうしてショウと同じ部屋なのよ!」
ラルが出入り口に立って怒鳴るので「俺に言うな!」荷物を置くショウがムッとすると「他に部屋がないか聞いてくる!」
戻ろうとすると「ああ、スタン」ちょうど隣の部屋から出てきたので呼びとめ「聞きたいことがあるの。どうしてショウと同じ部屋なのかしら?」
「この宿は小さいから、人数分の部屋が取れなかったんだ」
「だからって、どうしてショウと一緒なの?」
「最初はジットの奥さんと同室の予定だったんだけど、別々に行くことになったから部屋をキャンセルするしかなくて、こうなったんだ」
「そう、仕方ないわね。じゃあ、別の宿屋を探すわ」荷物を持って廊下を歩きだすので「ちょっと待てよ。一人だけ別行動されると困る」
「そんなこと言われても、こっちも困るわよ」
「今日のところは我慢してくれないか?」
「我慢ですって?」
「……先日会ったときとえらく雰囲気が違うけど」
「そう?」
「そもそも、出発前日に君の体調が悪くなったと言って、出発をズラすことになったから部屋が取れなくなったんだ。とにかく今日は我慢してくれ。次からはちゃんと部屋割りにするから」
「体調が悪くなってしまったのは、この大陸の気候が合わなかったからよ。わざとじゃないわ」
「わかってるが、相棒のことがそんなに信用できないで、よく組んでるな」ラルの隣にいるショウを見ると「それとこれとは別でしょう?」
「そうか?」
「ラル、こんなところで別行動はダメだ」
「そんなこと言われても、空き部屋がないと言われたら、他の宿屋に行くしかないでしょう? それとも、一人野宿しろというの?」
「……わかった。俺がジープで寝るよ」
「外で寝たら蝋人形になるぞ」とスタンが言うので「凍死するってこと? この気温で?」ラルが突っ込むと「ここら辺はあまり治安がよくないエリアだから、ちょっと質の悪い奴が出るんだ」
「誰なの?」
「聞かないほうがいい。とにかく、外で寝ることは即、死を意味するからな。忠告はしたぞ。あとはそっちで話し合ってくれ」と言うと一階へ降りていく。




