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シルバーフェニックス戦記 ~護るべきものは~  作者: 夏八木 瀬莉乃
第五章 謎の組織
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57-3 決められないこと

 

 時刻はもうすぐ午後十一時を回ろうとしている。


 この時間、外を歩いているのは飲み屋で飲んでいた人くらいなので、人通りのない道を選んで目的の雑木林へ行くと、タブレットを確認して奥へ進んでいく。


 周りに光を出すものがないため星空がきれいに見えるが、そんな余裕はなかった。

 早くラルを見つけることに集中していたため、周りの木々の幹が光りを放っていることにすら気付いていない。


「この奥だな。ラル! ラル! アッ!」


 顔を上げたところで木の幹が光っていることに気付き、その光が道標のように奥へ続いている。


「ラルのいるところへ案内してくれるのか?」


 ショウは半信半疑で光る幹に付いて進んでいくと、いつの間にか森の中へ入っていた。


「あの雑木林の奥に、こんな森があったのか」


 ところどころ月明かりが差し込み、道案内の光る幹のお陰で転ぶことなく進んでいくと、小さな広場の先、大木の根元にしゃがむラルの姿が見えてきた。


 ラルはまた、大木から気のエネルギーを分けてもらっていたのだ。


 ショウは終わるまで森の出口で立ち止まり、ラルが立ち上がると傍へ行って声を掛けた。

「ラル」

 すると驚くラルが振り返り「ショウ!」


「終わったのか?」

「……」

「少しは体調が良くなったか?」

「……どうして、ここにいるとわかったの?」

「まあ、いいじゃないか」

「……発信器?」


「姿を変えることができそうか?」

「……」

「ダメか。仕方ないな。だったら早く戻ろう」

「……」

「ほら、帰るぞ」

「……」


「なんだよ」

「なんで、怒らないの?」

「なんで怒らないといけないんだよ」

「だって、こんな姿で、黙って、出てきたんだよ」

「そうだな。村の人に見付かったらどうするつもりだったんだ?」

「……」


「とにかく、早く戻ろう」ラルの手を取るとまた幹が光りだすので、道案内の通りに引き返していく。


 雑木林から出ると、遠回りになるが店のない通りを選び、家に戻った。


 リビングのテーブルに座ると「この土地の気との相性はどうだ? 何か副作用は出てないか?」

「今のところ、大丈夫」

「そうか。速足で戻ってきたから喉が渇いたな。何か冷たいものでも飲むか」


 キッチンへ行くと、冷蔵庫で冷やしておいたノンカフェインのお茶をグラスに入れ、持ってくるとラルの前に置く。


「それを飲んだら寝ろよ」

 グラスを取るラルが「どこに発信器を付けたの?」

「それは言えない」

「ショウ」


「今回のようなことが起きないとわかったら取ってやる」

「それは……」

「ほら、早く飲んで寝ろよ」


「なんで怒らないの?」

「さっき答えただろう?」


「……なんで、あそこに行ったか聞かないの?」

「気をもらいに行ったとわかったから」

「なんで、気をもらいに行ったか聞かないの?」

「……」


「わかってるんだ」


「……前にも言っただろう? 俺の前から黙って消えたら、どんなことをしても捜しだすって」

「私は、ショウが行けないところに、行くことができるんだよ」


「どうして俺が……いや、いい」

「なんで言わないの?」

「……ここでまた押し問答したら、またお前を追い詰める……」

「……」

「ほら、早く飲まないと(ぬる)くなるぞ」


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