55-1 チャットでの報告
しばらくはラルの寝顔を見ていたが、リビングへ戻ると、明日からの行動とシンシアの詳細を報告するため、グループの総責任者にチャット依頼のメールを出すと、時間を作るので少し待つよう返事がきた。
「そういえば、ここのところ頻繁にチャットしてるな。忙しいからメールでと言ってるのに、チャットでと言われてるから連絡してるが、いいのか?」
そうこうしているうちにアドレスが送られてきたので接続すると「待たせてしまって申し訳ないね」と、いつものバリトンボイスが話し掛けてくる。
「忙しいときは無理に時間を取らなくていいですよ」
「いや、君とは直接話をしたいから、気にしなくていい」
「しかし」
「あの子はいないだろうね?」
「はい。昼寝してます」
「そうか。それで、今日はどんな話なんだ?」
「明日、組織の本部へ行くことになりました」
「そうか。あの子の状態が良くなったのか?」
「いえ。催眠術を掛けて別人格になることになりました」
「では、姿はどうなんたんだ?」
「戻ってません。先日、大陸の東側にいるグループのメンバーは、体調に変化がなかったとの報告がラルのところに来たそうなので、その東側にあると思われる組織の本部へ行く道すがら、ラルに体調の変化を確認してもらうことになりました」
「なるほど。どの地点で姿を変えられるようになるのかを確認するのか。そこから逆算して、発信源のアタリを付けようということだな」
「はい。それと、組織の本部に着いたシンシアたちと先ほど話したんですが、本部があると思われる森には、どうやら結界らしきものが張られてるようです」
「結界?」
「はい。彼女と同行してるルーチス レイトのミランドも、森の近くでヌメッとした感触があったと言ってました」
「それは面白いな。では、本部へ着いたら、君たちが検証した事と本部の場所を教えてくれ。こちらでも調査しよう」
「わかりました。あと、もう一つ調査をお願いしたいことがあります」
「どんなことだ?」
「アルビオン国のご老公が警戒してる人物がいます。表立っては目立った行動をしていならしく、俺たちの調査でも特定できなかったので、そちらでも調べてもらいたいんです」
「あの老人が警戒する人物か。かなりの曲者らしいな。わかった。こちらでも調査してみよう」
「そのご老公がシンシアを匿ってたということを前に報告しましたが、本当だったようです。彼女から直接聞きました。体調が良くなってきたころ、警戒する人物が屋敷に来ることになったので、シンシアに屋敷から出るよう言ってきたそうです」
「なんだって! それは本当なのか?」
「はい。シンシアから直接聞きました」
「そうか……」
「何か、思い当たることがあるんですか?」
「えっ、あ、いや……」
「できれば、隠し事はなるべくやめてほしいんですけど」
「フフッ、そうだな。私が君の立場でも同じことを言うだろう。実は、老公が学生のころ、我々のある者と親交があったらしいんだ」




