19-1 もう一つの救出グループ
海辺に立つ白亜のホテル前に一台のスポーツカーが停まると「いらっしゃいませ」ドアマンが近寄っていく。
「トランクの荷物をお願い」運転席の女性が窓越しに声を掛けると「かしこまりました」ベルボーイが開いたトランクから荷物を取りだし、運転席の女性が車から降りて助手席のドアを開けると女の子を降ろす。
「さあ、行きましょう」荷物を持つベルボーイに先導されてホテルに入り、フロントでチェックインを済ますと、別のボーイが荷物を持って部屋へ案内する。
「スゴーイ! ずうっと先まで海!」部屋に入ると、女の子が窓のところへ走っていく。
「本当だ。きれいね」
「お姉ちゃん、お迎えはいつ来るの?」
「おやつの時間になったら来るわよ」
「おやつ、食べられる?」
「ええ。一階のお店で、美味しいケーキを食べててねって言ってたわ」
「ワァイ!」
「お姉ちゃんお仕事が残ってるからテレビでも見てて。終わったらケーキを食べに行きましょう」
女の子の返事を聞くとアタッシュケースを持ってベランダに行き、椅子に座ると携帯電話を取りだして電話をかける。
『もしもし、私です。予定通りに行きました。ええ、今ホテルからです。ハイ、わかりました』
電話を切るとアタッシュケースからノートブックを取りだし、開いて電源を入れる。
二時間が過ぎたところで、女の子が窓を開けて声を掛けてきた。
「お姉ちゃん、まだお仕事終わらないの?」
「あら、もうこんな時間」腕時計を見ると「ごめんね。もうすぐ終わるから、もうちょっと待ってて」データをインプットすると電源を落とす。
「きれいな夕日」
ホテルの最上階にあるラウンジ。
カランカラーン。
海に面したカウンター席に座り、アイスティーのグラスをストローで掻き回している。
ボーッと外を見ていると「隣の席、空いてますか?」声を掛けられたので「他の席が空いてますよ」振り返ると「シ、ショウ!」驚いて立ち上がり「なんであんたがここにいるのよ!」
「シッ、声がでかい」
「アッ」口を押さえて周りを見ると、後ろのボックス席に座っている女性客が怪訝な顔をしているので「すみません」軽く頭を下げて謝る。
女性客が再びおしゃべりを始めるとショウはキラの隣の席に座り「長距離をノンストップで走ってきたから、さすがに疲れた」コキコキと首を回し「いつまで突っ立ってんだよ。まだアイスティーが残ってるぞ」
「エッ? あ、ああ」席に座ると、ショウが近くを通るウエイターにアイスミルクティーを頼む。
「ねえ、どうやって付けてきたの?」睨み付けると「そんな顔するなよ。付けてない。偶然だって」
「ウソ」
「ウソじゃないよ」
「……車、車ね? そっか、車に発信機を付けたのね?」
エッという顔をするので「やっぱり! 迂闊だったわ。まさか、そんなところまで頭が回るとは思わなかった」頭を抱えるので「そういう言い方されると腹が立つが、勘いいな」
「あの時アッサリ引いたから何か仕掛けてくると思ってたんだけど、もう少し注意しとくべきだったわ」




