46-5 次のステージへ
「それで、最後はあんただ。何か情報があるか?」カイがショウに話を振ると「申し訳ないが、今回、俺からの進捗情報はない」
「珍しいね。いつも何か掴んでくるのに」隣のジットに聞かれ「あるにはあるんですが、発表するほどの規模じゃないので」
「そうか。それはある意味、変化が加速しているわけではないという状況になるわけだ」
「そうですね。ただ、いろんな現象が止まったわけではないので、一週間後、一ヶ月後にどうなるか、測定を続けていく必要があることに変わりはないです」
「そうか」
「では、何か大きく変化したとき、もしくは前兆が現れたら情報共有を頼む」スタンが声を掛けてくるので「わかった」返事をして、朝会が終わった。
ショウはお昼用の食事を奥さんから受け取ると、ジットと一緒に帰途に付いた。
「先日会ったときよりやつれてるように見えるが、どうしたんだね?」ジットがゆっくり歩くラルに声を掛ける。「別人のように見えるが、何かあったのかね?」
「あ、いえ、朝が弱くて、いつもこうなんです」
「そういえば、この前会ったのは昼前だったね」
(前に、ミランドがジットと家の前で会ったと言ってたな)
「体調は大丈夫なのかね?」
「はい。ご心配をお掛けしました」
「……まあ、無理はしないようにな」
「……はい」
ジットの家の前まで来ると「明日は九時半に車を表の道に出しておくから」
「わかりました」
「では」
ジットと別れると家にいき、リビングのテーブルに向かい合って座る。
「フゥ」ラルがため息を吐くので、紅茶を入れるショウが「ジット、何か気付いてるな」
「あれだけの観察眼を持ってる人なら、二人いたと気付くでしょうね」
「だが、憶測で止まってる」
「そうだね。何か仕掛けてくるかな?」
「いや、そんな事はしないだろう。何かあれば直接聞いてくる」
「……そっか」
「とにかく、ミランドたちの行動が確認できてよかった。今のところ順調に行ってるようだ」
「何かあればイータル ヴェンティたちが連絡してくれることになってるから。あとは、私たちが組織の本部へ行って、シンシアの治療ができるようにしないといけない」
「まずは保護施設がどうなってるかだな。設備等、確認してからでないと彼女の治療ははじめられないから、ラルが持ってる薬で対応することになるだろう」
「この前、かなり補充できたから、大体のことには対応できる」
「そうか。グループから指示が来てるか?」
「シンシアの件で、合流したら彼女の状態を連絡するよう依頼が来てた」
「とにかく、メンタル面が心配だから、早く合流して様子を確認しないといけないな」
「……うん」
「それと、組織の本部は面白い場所にあるらしいな」
「前から不思議だったの。ジットも言ってたけど、この大陸は十三人の領主が治めてるから、必ず誰かの土地にあるのに、どうして存在を知られず、また活動ができてるのか。まさか人間の世界にもあるなんて知らなかった」
「では、王国には同じような場所があるのか?」
「あ……ええ、まあ……」
「また自分を責めるなよ」
「……」
「まあ、今の話を聞かなくても、お前が何か知ってそうなのはわかってた」
「……ダメだね。今の私だと、すぐ顔に出てしまう」
「シラを切り通せばいいんだ。気にするな」




