43-1 逃走中の重要者と回復の兆し
家に入ると、いつものようにラルとミランドが朝食のセッティングをして待っていた。
「ああ!」
『御飯がきた!』
「はい、お待たせ」バスケットをテーブルに置くと、蓋を開けて中をのぞく。
ショウが手を洗って戻ってくると、二人はバスケットの中身をテーブルに出し、ライムギのリゾットを深皿に取り分けていた。
「ああ?」ラルがリゾットを指して、これは何? と聞いてくるので「ライムギのリゾットだそうだ。生姜が入ってるから、発汗作用があって体によさそうだぞ」
「ああ……」初めてらしく、匂いを嗅ぐ。
『おいしそうだよね』ミランドも興味があるらしく『早く食べよう』と急かすので「では、いただきます」席に着くショウが声を掛けると『いただきます!』
「ああ!」
二人そろってリゾットを食べはじめる。
食後、お茶を飲みながら朝会の話になった。
「南側沿岸の要調査ポイントは、組織のほうでチームを組んで対応してくれるそうだ」
「ああ!」
「俺たちが持ってる情報を送ってほしいと言われたよ」
『じゃあ、そっちの件は結果待ちね?』
「そうなるな」
ラルが隣の椅子に置いてあるノートPCをテーブルに置くと『禁足地には入れないでしょう? ここはどうするの?』
「地道に情報を集めるしかなさそうだな」
『フロス アクアエたちは、何か知ってるんじゃないかな?』
「どうだろうな。彼女たちは自由に出入りできるだろうから、人間が決めたことはわからないんじゃないか?」
『そうだね……そうかもしれない』
「次に出たことなんだが、ラル、シルバーフェニックス王国では、貴族と呼ばれる位があるだろう?」
『なんで、そんなこと聞くの?』
「実は、例のご老公が貴族の位のシルバーフェニックスを匿ってたが、行方不明になって捜してるらしい」
「誰!」と大声を出すので「エッ?」ショウとミランドがラルを見る。
「お前、今、誰って言った……」
「アッ、言葉が出る……」ラルも驚き「話せる……」泣きだすので「ああ、よかった。やっと話せるようになった」ショウが椅子に掛かっているタオルを渡す。
『すごいショック療法。でも、話せるようになって良かった。この調子だと、姿もすぐに変えられるようになりそうだね』久しぶりにラルの声を聞いて安心するミランド。
「一つ問題がクリアできてよかった」ホッとするショウだが「話を元に戻すぞ」と言うとラルは涙を拭き「行方不明になった貴族の位の者は誰なの?」と改めて聞く。
「それはわかってない。
現地にいるメンバーから組織の本部に情報が入り、スタンとテッドが応援で出向いたそうだが、詳細がわからないらしい。
スタンの話だと、もし逃げ出したのであれば保護する必要があるということで組織員が集められ、捜索しているようだが、保護するに至ってない。
スタンたち応援員は本来の任務があるため期間が決まってるらしく、他のメンバーと交代して戻ってきたということだ。
そして、この土地の領主の館に窃盗が入ったというフェイクは、検問所の警備を厳しくするための口実だったようだ」




