17-2 三度目のご対面
二十分後、キラが着替えて出てくると「お疲れ様」ショウが声を掛けてくる。
「本当に疲れたわ。今日は、特別に、重たい箱を運んだから」肩をトントン叩くので「それは申し訳ない。お詫びに肩を叩いてやろうか?」
「鎖骨を折られそうだから、遠慮しとくわ」
「骨を折るほど強くは叩かないよ」
「本当かしら? とにかく、遅いから家に帰ったら、と言っても、付いてくるんでしょう?」
「もちろん。さあ、行こうか」
サーシュはショウの背中で眠っている。
「何か飲みたいわ」
「こんな時間に、開いてる店が近くにあるか?」
キラが指さす曲がり角に、大きなランプが置いてある、わりと大きなカフェがあった。
「午前二時まで開いてる貴重なお店よ」
裏庭が見える窓際の席に行くと、ショウの背中で寝ているサーシュを降ろし、ソファに寝かせて席に着くと、注文を取りにきたウエイトレスが、サーシュにクッションとタオルケットを持ってきてくれた。
お礼を言うと二人とも紅茶を頼む。
「各テーブルにランプが置いてあるなんて、洒落てるな」テーブルの端に置いてあるアンティーク調のランプを見る。
「仄かな光は、心を和ませてくれるわ」
「温かみのある光だよな」
「……怒らないの?」
「怒る? なんで?」
「アルドの屋敷にいた彼らを勝手に連れてったから、散々怒られたでしょう?」
「いや。架空のリストを作って提出したから、その事はバレてない。だから、警察のリストに重要参考人として載ってしまったことは、取り消されたよ」
「まあ、どうもありがとう。でも、一緒にいた刑事さんはそれで納得したの?」
「頼み込んだよ。捜しだして彼らの居場所を確認するから、それまで見逃してくれって言ってね。お陰で目一杯、奢らされた」
「フフッ、悪いことしちゃったわね」
「まったく、ホッといたら、彼らを誘拐したということで、指名手配されるところだったんだぞ」
「誘拐ですって!」
「シッ!」口の前で指を立て「状況を考えればそうなるだろう」
「……そうね。そうなるわね」
「なあ、一つ、聞いていいか?」
「……何?」
「PFSのような保護団体で、水面下で動いてる大きなグループがあるのを知ってるだろう?」
「水面下で?」
「そう。表立って動いてないグループだ」
「保護団体はたくさんあるから、幾つかあるんじゃない?」
「個人や少人数で活動してるんじゃなく、かなりの人数で広範囲で動いてる大きなグループだ。キラは今、そこにいるんだろう?」
「エッ?」
「やっぱりな」
「答えてないわよ」
「顔に書いてあるよ。そうだって。ああ、誤解するなよ。別に、そのグループの邪魔をしようと思ってるわけじゃない。どういう組織編成で動いてるんだ?」
「さあ?」
「話してくれないのか?」
「だから、知らないと言ってるじゃないの」
「じゃあキラは今、どのグループに所属してるんだ?」
「答える必要ないでしょう?」
「例のグループに所属してるから言えないんだろう?」
「しつこいわね。知らないと言ってるでしょう」
「なぜ俺が聞いてるグループのことが、キラが所属してるグループのことじゃないとわかるんだ?」
「それは……」
「それは?」聞き返すと苦虫をかみつぶしたような顔をするので「グループの存在を表沙汰にしたくないからか?」
「相変わらず、聞きだすのが上手だこと」
「どういたしまして。で、どういう組織編成で動いてるんだ?」
「PFSだって、内部組織のことを公開してないじゃない」
「それはそうだけど、概要くらい教えてくれてもいいだろう?」
「無理ね」
「じゃあ、PFSを辞めたら話してくれるか?」
「エッ?」
そこへ紅茶が運ばれてきたので、話は中断した。




