36-2 イータル ヴェンティからの報告
見たかぎり十五・六才にしか見えないライトブラウンの瞳のイータル ヴェンティが『この紅茶、おいしいです』と味を楽しむように飲む。
『人間が飲むお茶もおいしいですね』もう一名の、こちらは少し年上のたれ目がかわいいイータル ヴェンティが、喉が渇いていたのか一杯目をすぐに飲みほし、二杯目をショウから入れてもらっている。
お茶を飲んでいる間、いつこの大陸に来たのか。他に仲間はいるのかなどを聞いた後、彼女たちは再び、南へ向かって飛んでいった。
彼女たちを見送っていると『隣の領主の館だけなのかしら?』ミランドが呟くので「エッ? なに?」
『フロス アクアエたちが潜り込んでいるのが、隣の領主の館だけだと思う?』
「彼女たちが、何らかの理由で領主の館に潜り込んでると言うのか? その根拠は?」
『あなたがさっき言ったじゃないの。帰路が断たれるかもしれない建物の奥の場所へ行くのはって』
「それは、君が彼女たちは瞬間移動できるわけじゃないと言ったからだ。しかし、人間に彼女たち、精霊は見ることができないんだろう? なら、そんなに心配する必要はないじゃないか?」
『今のご時世じゃなかったら、気にもしなかったわ』
「……そういう意味か」
『とにかく、イータル ヴェンティたちからの報告を待ちましょう。私たちには他にやらないといけない事があるから』
「ああ。南の海域の報告を聞きたいね」
『じゃあ、ラルも待ってることだし、家の中に入りましょう』
ティーセットが乗ったトレーを持ち、家に入ると、ミランドがリビングのソファに用意しておいた大きな鏡の隣に座り、鏡の縁に手を当てる。
キッチンから戻ってきたショウがラルの向かいのテーブルに座ると、鏡に映っている景色が歪んでいき、歪みがなおると、庭のテーブルに座るイータル ヴェンティの二名が鏡に映る。
「相変わらず、すごい手品だな」
「ああ、ああああ」
「手品じゃなくて技だと言うんだろう?」
「ああ!」
「人間には手品としか思えないんだよ」
「ああ!」
「こんなこと慣れないって」
『そろそろ進めてもいいかしら?』
「ああ、どうぞ」
『それでは、南の海域の状況を報告します』十五・六才にしか見えないライトブラウンの瞳のイータル ヴェンティが話しはじめる。『南の海域担当のマラ ルクスによると、海流の変化が大きく見られるようになったのは、ここ最近のことだそうです。そして、その流れは明からに自然のものではなく、人工的なものだということでした』
「なんだって!」
「ああ……」
「ラル、何か心当たりがあるのか?」
「……ああ」
「あとで聞く」
「あ?」
「あ? くらいならわかるけど、他のことはわからない」
「……ああ!」
「ミランド、続けて」




