35 三人での朝食
家に入ると、まだ寝ていると思っていたラルとミランドが、リビングのテーブルに座って朝食がくるのを待っていた。
「ああ」
『御飯がきた』
テーブルには三人分の平皿と紅茶が入れてあり、準備万端。
「今日は早起きだな」持ってきたバスケットをテーブルに置くと、待ちきれない二人がバスケットの蓋を開けて中を覗きこむので「こら、慌てるな。手を洗ってくるから、ちょっと待ってろ」
二人を座らせると手を洗いに行き、戻ってくると、バスケットの中から順番にお皿を取りだす。
『ああ、いい匂い』
「ああ?」
「ダメだ。それはミランド用。ラルのはこっち」ハムエッグをミランドに渡し、温野菜のサラダをラルに渡す。
『オシャレ』ハムエッグのお皿を受け取るミランドが『レストランって、こんな感じで出てくるんでしょう?』
「そうだな。村じゃなければお店を出してたと、奥さんが言ってたよ」
『ならカフェにすればいいのに。スイーツ激ウマだったから、もったいない。ね? ラル』
「ああ!」おいしそうに、マヨネーズソースが掛かったブロッコリーを食べている。
ショウはスイーツを冷蔵庫に入れると二人の向かいに座り、食べはじめると、ミランドが朝食会の話題に付いて聞いてくるので、掻い摘んで主だった話題を話す。
『あのごつい領主が二人いるって! かなりインパクトあるわ』領主の顔を思い出すミランド。
「ああ? ああ」
『十三人の領主じゃなくて、十四人いるじゃないかって?』
「ああ、言われてみるとそうだな」納得するショウ。「表の顔のほうは兄らしいが、比較的おとなしい性格で、裏の顔の弟はかなりの野心家らしくて、狩り人や掏り人のまとめ役などを担当してるらしい」
「ああ! ああ」
「そう、ジットの元雇い主だ」
『だから、領主が双子だということを知ってたのね』ハードブレッドをかじるミランド。『それで、これからどうするって言ってたの?』
「まだ具体的には決まってない。もう少し状況分析してから、どうするか決まるだろう」
『じゃあ、もう少し、ここに留まるのね?』
「そうだろうな」
『ラル、しばらくはスイーツが食べられるよ』
「ああ!」
「目的はそれか」ため息を吐くショウが「冷蔵庫の下の段にあるものから食べろよ。新しいものは上の段に置いてあるから」
『了解! ラル、行くよ!』ミランドは立ち上がると、ラルと一緒にキッチンへ行くので「まあ、ラルの食欲がでてきて、一定量食べられるようになってきたから、一応、良しとするか」と言いつつ、しばらくの間、スイーツを買いに行かされるのだろうと予測する。




