30-1 イータル ヴェンティへの依頼
ショウとミランドは、庭に出るとテーブルに並んで座った。
「座ってから言うのもなんだけど、俺がいて大丈夫か?」
『大丈夫だと思う。前に呼んだときもいたんでしょう?』
「いたというか、話し終わったところへ行ったような感じだったな」
『そう。でも、私が呼ぶから大丈夫だと思う』
「ああ、そうだよな。じゃあ頼む」
ミランドは真っ青な空を見上げると『空を統べる無限の旅人にて我が永遠の友。イータルヴェンティ。我が声に応えを』
「……そんな小さな声で聞こえるのか?」不思議そうに聞くと『大声出したら、近所の人達が何事かと集まって来ちゃうわよ』
「それはまあ、そうだけどさ」心配そうな顔をするので『彼らを呼ぶのに、声の大きさはあまり関係ないの。重要なのは、彼らを呼ぶときの決まり文句を言うかどうか。まあ、待ってみましょう」
「時間が掛かるのか? なら、お茶でも持ってくるぞ。ラルの様子も見てきたいし」
『風があるから、そんなに時間はかからないでしょう。ほら』空を見上げると、長いライトブラウンの髪をなびかせ、白いドレスを着た二人の女性が空から降りてくる。
「お久しぶりでございます、ラル様」
「ご機嫌いかかですか?」
目の前に立つ二人を見て、目を丸くするショウ。(人が空から降りてきたって、こんな感じか?)
『ごめんなさいね。私はラルではなくて、代理のルーチス レイト、鏡の精なの』
「まあ、そうなんですか。では、ラル様はどちらに?」
「彼女なら家の中にいるわよ。訳あって外に出られないから、私が代理を務めることになったの」
「そうなんですか。それで、私たちにどのような用事があるのでしょうか?」
『まずはこれを読んでらえるかしら?』
ショウが作成した依頼書を渡すと、二人一緒に内容を読んでいく。
「まあ! ここに書いてあることは本当なんですか!」
『質問はこっち』隣のショウを見ると「ここに書いてあることは本当なんですか?」
「エッ、あ、ああ。キラの総責任者から直接聞いたことだ」
「キラの総責任者ですか?」
「総責任者と言えば……」二人が顔を見合わせるので「俺を疑ってる?」
「いいえ。あなたは前にお会いしたことがありますので。この前、ラル様に呼ばれたとき、一緒にいらした方ですよね?」
「ああ、あの時は組織のメンバーを誘導してくれてありがとう」
「あれくらい、いつでもやります」
「で、なんだっけ? そう、そこに書いてあるとおりのことが起きはじめてるから、幾つか調査をお願いしたいんだ」
「ここに書かれてる調査内容ですね?」
「そうだ」




