29-1 事件の真相調査
「ラル、何か情報を掴んだか?」
リビングのテーブルでPCを操作している彼女に声を掛けると「ああ……」首を横に振る。
「そうか」
「ああ?」
「こっちはいくつか情報をもらったぞ」ジットの話をすると「ああ」ラルは感心するように頷き、PCに文字を打つ。
『大分範囲を広げて調べてみたけど、これといって気になる事件も情報も見つからなかったから、ジットのカムフラージュ説が正しいのかもしれない』
「俺も、聞いたときは、なるほど、と納得したよ」
「ああ」自分も同じ意見だとラルが頷く。
「まあ、明日の情報交換で、新たに進捗が確認できるだろう。その時、これからの行動もわかるだろうから、明日の情報を聞いてから、これからどうするか決めよう」
「ああ」
「そういえば、薬は飲んだか?」
「ああ」PC横に置いてある薬のポーチを指すので「せめて話ができるようになるといいんだが」
「……ああ」
「落ち込むな。さあ、調査の続きを始めよう」PCの電源を入れる。
その後、ショウが調べても「領主の館 強盗事件]」に関係することは見つからなかったので、ジットの説が有力と判断し、その事をチャットで伝えると彼も調査した結果、何も出てこなかったので、一旦、調査を打ち切ると言ってきた。
翌日の情報交換時にそのことを報告し、向こうの出方を見ようということで話は終わり「結局、領主が起こした騒動に振り回されただけかもしれないな」
『まだ決定したわけじゃないけど、騒がせ過ぎ』ラルがキーを叩く。
「しかし、もしカムフラージュだったとしたら、ずいぶんと肝が小さい領主だな。どんな人物なんだ?」ショウが領主のことを検索すると、予想と反した写真が出てきた。
「身長百九十五センチ。体重百二十キロ?」
ハンマー投げの選手になれそうな体格の四十代の男性が写っている。
「これで肝が小さいのか?」とても信じられず悩むむと、隣のラルがモニターを覗きこみ「ああ?」眉間にしわを寄せ、違うんじゃない? というような顔を向ける。
「どう見ても、通常の三倍くらい大きい肝を持ってるぞ」
「ああ」同意するラルがキーを叩く。『やっぱり、何か企んでる気がする』
「俺もそんな気がするな」
『そうだ! イータルヴェンティに様子を見に行ってもらうよう、頼んでみる』
「イータルヴェンティって……」
『風の精霊だよ』
「ああ! 組織のメンバーを、この村へ来るよう手配してくれたんだっけ?」
『そうだよ。彼女たちなら見つかることなく様子を確認できるから』立 ち上がると自分の部屋へ戻り、額にチップを付けて人間の姿になって出てくると「あ!」突然、立ち止まる。
「どうした?」
「……ああ」
「……ああ、そうだな。あ、しか言えなかったら、依頼できないな」
「ああ!」頭を抱えるので「依頼書でも作るか? 文字くらい読めるだろう?」
「あ、ああ……」




