28-3 新たな事件勃発
その後、ジットと一緒に帰路に着くと、学校へ行く子供たちとすれ違う。
「ここは平和ですね」
「今はね」
「……今回の事件、あなたはどう見てますか?」
「そうだね。正直に言うと、予想外の事件だ」
「どこが予想外なんですか?」
「領主の館に窃盗に入るという設定がバカげてるよ」
「設定ですか?」
「そうだ。これは領主が仕組んだカムフラージュと見てる」
「エッ!」つい大声を出してしまい、慌てて「すみません、つい」
「これは予想してなかったかね?」
「はい」
「そうか」
しばらく無言で歩くと「どういうことでしょうか?」ショウが説明を求める。
「ここの領主が、何かの目的で流したデマだよ」
「デマ? では、客間に置いてある金品が盗まれたというのは」
「そもそも、屋敷のどこから入ったのかわからないが、客間までいくつも部屋があるのに、どうして飛び越えて客間になるのか。この事に気が付くのは、屋敷内部を知ってる者にしかわからないことだ」
「……襲われたと思わせるためのカムフラージュ」
「そうだ」
「あなたの作戦が漏れてしまったんですか?」
「それはないよ。まだ具体的に計画を組んでいるわけではないからね。領主側がかわそうとしているのは君たちじゃないかね?」
「俺たちですか?」
「正確に言うと、ケッドマンの屋敷が襲われたため、次のターゲットが自分にならないように、先に襲われたと事件をでっち上げたのかもしれないね」
「ああ、なるほど。そこに繋がるんですか」
「だから、いくらこの事件の情報を探しても、何も出てこないだろうね」
「なにも出てこないことが、カムフラージュだったという証拠ですね?」
「そうだね」
「俺は、何かを領主の屋敷に仕掛けるために、ワザと客間にある金品だけを盗んで、本当の目的をカムフラージュしたんだと推察しました」
「ああ、辻褄が合うね。もしかしたら、ショウ君の推察のほうが合ってるかもしれないな」
「自分の持論を否定するんですか?」
「いや、私も推察しただけだからね。とにかく調査してみよう。途中で何か気になることがあったら、いつでもいいから連絡してくれ」
「わかりました」
「ところで、お嬢さんの具合はどうかね?」
「実は……」正直にまた体調を崩して動けなくなったことを話すと「そうか。よほどこの大陸の気候が合わないんだろうね」
「なので、もし移動するのであれば、先に行ってください」
「そんなに具合が悪いのか? この村にも医者はいるから、診てもらうといい」
「そうですね。ひどくなるようだったら診てもらいます」
「あまり無理をしないようにな。妻にも栄養のあるものを差し入れるように言っとくよ」
「いえ、そこまでしていただくのは心苦しいです。今でもよくしてもらってますし、グロサリーストアの奥さんが、差し入れしてくれているので」
「そういえば、そんなことを言ってたね」
「村の人達には、本当に良くしてもらってます」
「そうか。それは良かった」
ジットの家の前までくると翌朝の待ち合わせ時間を確認し、別れた。




