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シルバーフェニックス戦記 ~護るべきものは~  作者: 夏八木 瀬莉乃
第五章 謎の組織
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28-3 新たな事件勃発

 

 その後、ジットと一緒に帰路に着くと、学校へ行く子供たちとすれ違う。


「ここは平和ですね」

「今はね」


「……今回の事件、あなたはどう見てますか?」

「そうだね。正直に言うと、予想外の事件だ」


「どこが予想外なんですか?」

「領主の館に窃盗に入るという設定がバカげてるよ」

「設定ですか?」

「そうだ。これは領主が仕組んだカムフラージュと見てる」


「エッ!」つい大声を出してしまい、慌てて「すみません、つい」

「これは予想してなかったかね?」

「はい」

「そうか」


 しばらく無言で歩くと「どういうことでしょうか?」ショウが説明を求める。

「ここの領主が、何かの目的で流したデマだよ」


「デマ? では、客間に置いてある金品が盗まれたというのは」

「そもそも、屋敷のどこから入ったのかわからないが、客間までいくつも部屋があるのに、どうして飛び越えて客間になるのか。この事に気が付くのは、屋敷内部を知ってる者にしかわからないことだ」


「……襲われたと思わせるためのカムフラージュ」

「そうだ」


「あなたの作戦が漏れてしまったんですか?」

「それはないよ。まだ具体的に計画を組んでいるわけではないからね。領主側がかわそうとしているのは君たちじゃないかね?」

「俺たちですか?」


「正確に言うと、ケッドマンの屋敷が襲われたため、次のターゲットが自分にならないように、先に襲われたと事件をでっち上げたのかもしれないね」

「ああ、なるほど。そこに繋がるんですか」


「だから、いくらこの事件の情報を探しても、何も出てこないだろうね」

「なにも出てこないことが、カムフラージュだったという証拠ですね?」

「そうだね」


「俺は、何かを領主の屋敷に仕掛けるために、ワザと客間にある金品だけを盗んで、本当の目的をカムフラージュしたんだと推察しました」

「ああ、辻褄(つじつま)が合うね。もしかしたら、ショウ君の推察のほうが合ってるかもしれないな」

「自分の持論を否定するんですか?」


「いや、私も推察しただけだからね。とにかく調査してみよう。途中で何か気になることがあったら、いつでもいいから連絡してくれ」

「わかりました」


「ところで、お嬢さんの具合はどうかね?」

「実は……」正直にまた体調を崩して動けなくなったことを話すと「そうか。よほどこの大陸の気候が合わないんだろうね」


「なので、もし移動するのであれば、先に行ってください」

「そんなに具合が悪いのか? この村にも医者はいるから、診てもらうといい」

「そうですね。ひどくなるようだったら診てもらいます」


「あまり無理をしないようにな。妻にも栄養のあるものを差し入れるように言っとくよ」

「いえ、そこまでしていただくのは心苦しいです。今でもよくしてもらってますし、グロサリーストアの奥さんが、差し入れしてくれているので」


「そういえば、そんなことを言ってたね」

「村の人達には、本当に良くしてもらってます」

「そうか。それは良かった」


 ジットの家の前までくると翌朝の待ち合わせ時間を確認し、別れた。


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