25-2 総責任者
しばらく沈黙が続くと「ラルを、王国へ戻してもらえませんか?」
「……なぜだね?」
「これ以上こちらにいたら……精神が崩壊してしまいます。もう、限界を超えているので、救出活動を続けるのは無理です」
「……王国へ戻れないことはあの子から聞いてると思うが、今、王国への入り口は、完全に閉ざされているんだよ」
「……そうですか。それほど危険な状態なんですか」
「……そうだ」
「では、救出されたあなたたちの仲間は、王国へ戻るのではなく、こちらにある保護施設で療養してるんですか?」
「まあ、そうなるかな」
「襲撃される恐れはないんですか?」
「今のところ、その心配はないね」
「なぜですか? 何か、鉄壁な守りでもあると言うんですか?」
「そうだな。その質問には、ある、と答えておこう」
「では、ラルをそこへ連れていきます。どこが一番近いですか?」
「ああ、そういう意味で聞いたのか。そんなにあの子の状態が良くないのか」
「そうです。早くなんとかしないと」
「……残念だが、その大陸に保護施設はないんだ」
「もちろんわかってます。大陸の北にある港から向かいの大陸まで移動するので、渡ってから一番近い場所に連れていきます」
「……君の気持ちは嬉しいよ。そこまであの子のことを思ってくれるとは、思わなかったからね。しかし、元キラのメンバーは、大陸に乗り込んだ以上、戻ることはできないんだよ」
「そんなことはないでしょう? それとも、死んだ後に戻れるというんですか?」
「いや。死んでも戻ることはできないよ」
「今のは例えですよ」
「わかってる。たとえ戻ってきたとしても、すぐに向かう羽目になる、ということだよ」
「どういう意味ですか?」
「先ほど、あの子から、その大陸が隔離されつつあると報告がきた。他のメンバーからはそんな報告が上がってきていないところをみると、君たちは、何かしらの発生源近くにいるということになる」
「ああ、そういうことか。もしかしたら、妨害電波の一因かもしれない」
「妨害電波?」
「そうです。今いる辺りは、かなり強力な妨害電波を出してるらしいんですが、俺の調べでは、他の電波らしきものが出ていることがわかりました」
「それが、大陸の隔離と何か関係があると言うのか?」
「物質が動けばそこに摩擦が生まれ、電磁波が発生します。それが風でもです」
「その電磁波が妨害電波と共鳴して、より強い磁場を作りだして隔離を誘発してると?」
「マイナスの相乗効果ですね」
「……なるほど。では、電磁波を作りだしている原因を突き止める必要があるね」
「それも早急に」
「では、あの子と二人で、その原因を調べてくれ」
「俺たちが、ですか?」
「そうだ。さっき言ったとおり、君たちがいる場所が隔離の発生源に近いだろう。だから、そのままそこに留まり、詳しい調査と、できれば発生源を特定してもらいたい」
「……そうですね。では、救出活動はどうするんですか? 新たに元キラのメンバーを寄越すんですか?」
「それは、これから考えるよ」




