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シルバーフェニックス戦記 ~護るべきものは~  作者: 夏八木 瀬莉乃
第五章 謎の組織
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25-2 総責任者

 

 しばらく沈黙が続くと「ラルを、王国へ戻してもらえませんか?」


「……なぜだね?」

「これ以上こちらにいたら……精神が崩壊してしまいます。もう、限界を超えているので、救出活動を続けるのは無理です」


「……王国へ戻れないことはあの子から聞いてると思うが、今、王国への入り口は、完全に閉ざされているんだよ」

「……そうですか。それほど危険な状態なんですか」

「……そうだ」


「では、救出されたあなたたちの仲間は、王国へ戻るのではなく、こちらにある保護施設で療養してるんですか?」

「まあ、そうなるかな」


「襲撃される恐れはないんですか?」

「今のところ、その心配はないね」


「なぜですか? 何か、鉄壁な守りでもあると言うんですか?」

「そうだな。その質問には、ある、と答えておこう」


「では、ラルをそこへ連れていきます。どこが一番近いですか?」


「ああ、そういう意味で聞いたのか。そんなにあの子の状態が良くないのか」

「そうです。早くなんとかしないと」

「……残念だが、その大陸に保護施設はないんだ」


「もちろんわかってます。大陸の北にある港から向かいの大陸まで移動するので、渡ってから一番近い場所に連れていきます」


「……君の気持ちは嬉しいよ。そこまであの子のことを思ってくれるとは、思わなかったからね。しかし、元キラのメンバーは、大陸に乗り込んだ以上、戻ることはできないんだよ」


「そんなことはないでしょう? それとも、死んだ後に戻れるというんですか?」

「いや。死んでも戻ることはできないよ」

「今のは例えですよ」


「わかってる。たとえ戻ってきたとしても、すぐに向かう羽目になる、ということだよ」

「どういう意味ですか?」


「先ほど、あの子から、その大陸が隔離されつつあると報告がきた。他のメンバーからはそんな報告が上がってきていないところをみると、君たちは、何かしらの発生源近くにいるということになる」


「ああ、そういうことか。もしかしたら、妨害電波の一因かもしれない」

「妨害電波?」


「そうです。今いる辺りは、かなり強力な妨害電波を出してるらしいんですが、俺の調べでは、他の電波らしきものが出ていることがわかりました」


「それが、大陸の隔離と何か関係があると言うのか?」


「物質が動けばそこに摩擦が生まれ、電磁波が発生します。それが風でもです」

「その電磁波が妨害電波と共鳴して、より強い磁場を作りだして隔離を誘発してると?」

「マイナスの相乗効果ですね」


「……なるほど。では、電磁波を作りだしている原因を突き止める必要があるね」

「それも早急に」


「では、あの子と二人で、その原因を調べてくれ」

「俺たちが、ですか?」


「そうだ。さっき言ったとおり、君たちがいる場所が隔離の発生源に近いだろう。だから、そのままそこに留まり、詳しい調査と、できれば発生源を特定してもらいたい」


「……そうですね。では、救出活動はどうするんですか? 新たに元キラのメンバーを寄越すんですか?」

「それは、これから考えるよ」



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