25-1 総責任者
その後、ラル同様、精神的な負担が大きかったらしく、ショウもすぐ眠りに就いた。
数時間後、ショウの腕時計のアラームが鳴り、目を覚ますと辺りが暗くなっていた。
「大分寝たな」腕時計を見ると、午後六時を回っている。
ラルはタオルケットを掴んだまま寝ているので、起こさないようにベッドから出ると、リビングへ行ってPCの電源を入れ、キラの総責任者であるラルの叔父に、彼女の近況とともに感じている疑問を書き、送信する。
「さて、どんな返事が来るか。それによって、これからの行動が変わってくる」
他の着信メールを確認していると意外に早く返信メールが届き、開けてみると、チャット用のアドレスが貼られていた。
直接話がしたいということである。
ショウはすぐにアクセスすると、カメラ機能がオフになっているので姿は見えないが「ショウ君か?」低く頭の奥に響くような中年男性の声が、自分の名前を呼ぶ。
「はい」短く返事をすると「あの子は近くにいるのか?」
「いえ。別の部屋で寝てます」
「……そうか」
「あなたは……」
「ああ、直接話をするのは初めてだね。あの子がいつも世話になってる」
「いえ。僕のほうこそ、グループのメンバーに入れていただいて、ありがとうございます」
「……礼を言われるのは、なんか変な気がするね」
「そうでしょうか」
少し間があくと「あの子は、大丈夫か?」
「それは、毒を少しでも口にしたのか? という意味でしょうか?」
「……止めてくれたんだろう?」
「もちろんです!」
「……そうか。ありがとう」ため息と安堵感が伝わってくる。
「なぜ毒を飲ませるようなことをさせるんですか!」
「……そうだね」
「もう少しで、俺の目の前で……」
「……そういう、状況なんだよ」
「そういうって」
「私が姪に、毒を飲めと言うと思ってるのか?」
「では、どうして毒なんか持たせるんですか?」
「それは、そういうことをさせる人間に聞きたまえ」
「……すみません。あなたに言うべきことではありませんでした」
「いや、私も強く言いすぎた」
「では、もう一つメールに書いたことをお聞きします。なぜラルを一人で行動させるんですか?」
「ああ、そのことか」
「せめて複数で行動するように、手配することはできなかったんですか?」
「できていたらとっくにやってるよ」
「できない理由は何ですか?」
「最初は複数で行動してたんだが、メリットよりデメリットのほうが大きかったんだよ」
「どういうことでしょうか」
「狩り人のグループが例の鏡を持って至るところに出没したため、複数でいるほうが危険になったんだ」
「……ああ、そういうことか」
「実際、三・四人のグループが、全員一緒に捕まってしまったことがあってね。仕方なく単独行動に切り替えたんだよ」
「事情は分かりました」
「そうか……」




