21-1 忍び寄る破壊の前兆
「早く手を打たないと、この大陸から出られなくなる」
「突破口を作らないといけないのか。難しいな」
「また、キラの性格に戻らないといけない」
「キラの性格?」
「ショウと会ったころの性格。前に話したでしょう? 自己催眠で別人格になってたって」
「どうしてそんなことしないといけないんだ?」
「今の私では、任務を遂行するのが難しいから」
「……そこまでしなくても」
「時間がないの」
「なんの?」
「この大陸の異変を止めるための時間が限られてきてる」
「そんなに状況が進んでるのか?」
「もっと早く外に出るべきだった」
「あの状態では無理だった。他の二組のメンバーは気付かなかったのか?」
「グループからの連絡がなかったから、別の場所では確認できないのか、私と同じように家から出られなかったのかもしれない」
「では、戻ったらこの事を報告して、情報収集してもらわないといけない。戻ろう」
二人は雑木林から出ると、来た道を引きかえす。
「急ぐな。ここでまた体調を崩したら、戻ってしまうかもしれないだろう?」
「でも……」
「焦る気持ちはわかるが、まだ対応するだけの時間はあるだろう?」
「そうだけど……」
「いいから、ゆっくり歩け。元は気分転換で出てきたんだ」ショウが歩く速度を落とすので、ラルも仕方なく歩調を合わせる。
その後、家に戻るとリビングにノートPCを持ってきて、また向かい合わせにテーブルに座ると、それぞれメールを作成して送信する。
「どのくらいで返信が来るか」
「少し時間が掛かると思う」
「そうだな。何か冷たいものでも作ろう。アイスティーでいいか?」
「私がやる」
「いい。俺がやるから座ってろ」
「大丈夫」
「言うことを聞け。久しぶりに長時間歩いた。体に負担が掛かってるから、ゆっくりしてろ」立ち上がるとキッチンへ行く。
ショウがアイスティーをトレーに乗せて戻ってくると「グループから返信が来た」
「エエッ、こんなに早く来たのか?」グラスをラルの前におく。
「やっぱり、大陸にいる他の二組のチームからは異常現象の連絡は来てなくて、念のために確認するよう連絡したから、返信が来たら教えてくれるって」
「他の二組は南側と西側にいるんだよな?」
「うん」
「俺たちが上陸したのは北側。そこから移動して、今は大陸のど真ん中あたり。大陸の中心から歪みができ始めてるということか?」
「そうだと思う」
「もし、俺たちが内陸に来なかったら気付かなったということか」
「そうだね」
「この辺一帯に出てる妨害電波のことも気になるし、レジスタンスの村ということも、何か関係があるのか?」
「この村の人達は関係ないと思うよ」
「まあ、俺もその点は違うと思うけど、妨害電波のことはジットが知ってるらしいから、あとで聞いてみるか」




