18-2 できつつある新しい道
ショウは自分のノートPCを部屋から持ってくると電源を入れ、今日の話し合いで聞いた内容をグループへ報告するためにメールを作成して送信すると、ラルが薬のポーチから幾つか取り出しているので「何してるんだ?」
「薬で変化させる方法を試せそうだから、持ってる薬に該当するものがあるか、確認してるの」薬がありすぎるのでテーブルの上にポーチの中身をひっくり返し、種類別に分けはじめる。
「それにしても、相変わらずすごい種類だな。どうだ? ありそうか?」
「あるにはあるんだけど、頻繁に使うものじゃないから数が少なくて。メールには飲んでるうちに変化できるようになったとあるから、手持ちがあるうちに変化できるようになるといいんだけど」
「とにかく、姿を変化させることができるようになるというのであれば、急場しのぎでもやってみるべきだろう」テーブルの端に置いてある水差しからコップに水を入れると、ラルの前に置く。
「それで、どんな組み合わせなんだ?」
「それが、鉄分と栄養剤が数種類」
「鉄分? 貧血を起こしてるのか?」
「詳しい説明は書いてなかったけど、目眩を起こしやすいから、血圧が低くなってるのかもしれない」
「今のお前に、顔色が良くないとか言えないからな」
「これで顔色は普通」
「わかってるよ。でも、血液は赤いのかって聞きたくなるくらい肌が白いからさ」
「血液が青かったら納得する?」
「しねえよ」
「しないんだ」
「いいから、早く飲め」と言われ、該当する薬の錠剤をパッケージから出していくと、一粒ずつ飲みはじめる。
「思ったほど飲まないんだな」
「そうだね。四錠だけだから」
「これで明日の朝、変化できてるといいな」
「……うん」頷くものの、あまり信じてはいない顔をする。
「まあ、俺としては、今のままのほうがいいんだけどな」
「エッ?」
「独り言」PCの電源を切ると「じゃあ、今日はこれで寝ろよ」と言って部屋から出ていく。
翌朝。
ショウはいつもの時間に起きると朝食を用意し、ラルの部屋のドアをノックする。
「起きてるか?」
少しすると鍵が開く音がしてドアが開き、ラルが顔をだす。
「アッ、もう変化できるようになったのか?」
「うん。私はすぐに効いたみたい」黒髪でブルーグレーの瞳になっている。
「それは良かった。で、体調はどうなんだ?」
「ん……まだダルさがあるから、本調子じゃない」
「そうか。まあ、変化できるようになっただけでも良しとするか。でも、あまり無茶するなよ。まだ完全に体力が戻ったわけじゃないからな」
「……うん」
「じゃあ朝食にしよう。顔洗ってこい」
久しぶりに頭からバスタオルをかぶらず、ショウから「壁に激突するなよ」と言われずに部屋から出ると、洗面所へ向かう。




