16-3 ジルタニス
「これで、彼らがいくつかの拠点に分かれて行動してることがわかる」
「大規模で動いてるみたいですね。先ほども支部と言ってましたから」
「もしかしたら、中心となって動いてる人物は、私が知ってる男かもしれないんだよ」
「心当たりがあるんですか! どんな人物なんですか?」
「一緒に狩り人を指揮してた男だ」
「何だって? では、指揮官の一人だったんですか?」
「そうだ。しかし、裏で彼らを逃がしてたんだよ」
「逃がしてた?」
「そうだ。ある日、その事が領主にバレてね。しかし、彼は上手く逃げおおせたんだよ」
「……手引きをしたのは、あなたなんじゃないですか?」
「……フフッ」
「やっぱり。なるほど、見えてきましたよ。その男とあなたの間には約束があったんじゃないですか? あとから抜け出したあなたを迎えにいく、というところかな? もし組織のトップがあなたの言う知り合いなら、きっと名乗り出てくれる」
「……そうだ」
「そういうことだったんですか。合図は「罪滅ぼしのために仲間に入れてくれ」 辺りかな?」
「君はけっこう感働きがいいな」感心するジット。「だから組織に属さなくてもやっていけるのか」
「それはちょっと褒め過ぎですよ。「闇のジルタニス」ほど世渡りは上手ではないので」
「君も褒め過ぎだよ。私はそれほど器用ではないからね」
「そうですか?」
「これで、私がウソを吐いてないとわかってくれるだろう?」と聞かれて答えないと「まあいい。いずれわかってもらえることだろう」
「おかしなことを言いますね。人を信用させることは得意なんじゃないですか? 元スパイだったあなたには、簡単なことでしょう?」と聞くと答えないので「これも作戦ですか?」
「そう言われても仕方のないことか。今まで多くの人を騙してきたからね」
「今の状態では、お互い疑心暗鬼になりますよ」
「そうだね」
「あなただって、俺たちのことは気になるでしょう?」
「いや。君たちのことは信用してるよ」
「なぜですか?」
「人を見る目は衰えてないよ」ショウを真っ直ぐに見るので「とにかく、この状況が落ち着くまで、これ以上のことは聞きませんよ」
「私に関しての疑問はいつでも聞いてくれ。答えられる範囲内のことであれば答えるよ」
「ずいぶんと信用されてるんですね」
「信用してもらうには、自分から話さなければけないことを知ってるからね」
「なぜ、そこまでして俺たちの信用を得ようとするんですか?」
「……今の私は、一人だからだよ」
「スパイをやってたときは一人じゃなかったんですか?」
「一人だったよ」
「では、なぜ今になって?」
「これからは、情報を取る仕事をやるんじゃないからね。一人ではできないことだ」
「そうですね」
「ああ、長居をしてしまったね。これで失礼するよ」席を立つので「クッキーご馳走さまでした。奥さんにお礼を言っといてください」




