16-2 ジルタニス
しばらく沈黙が続いた後「ああ、忘れてたよ。家内が作ったクッキーを持たされたんだ」
テーブルの端に置いてある紙袋を目の前に置くので「では、新しくお茶を入れましょうか」充電式のポットからティーポットへお湯を入れると「そういえば、お嬢さんは何をしてるのかね?」ラルの姿が見えないので聞いてくる。
「部屋で寝てます」
「大丈夫かね? 彼らが言ってた組織の支部は、この近くになさそうだよ」
「そうですね」
「お嬢さんは連れていかないほうがいいと思うがね」
「……俺の相棒なんですよ」
「……そうか」
「あとで、この土地の領主の屋敷である、白亜の要塞の内部を説明してもらえるんですよね?」
「もちろんだ。しかし、あれから内部を改装したと聞いてる。どのくらい変わったかわからないから、私の情報は鵜呑みにしないほうがいいだろう」
「それは、例の組織のほうでいくらか把握してるでしょう」
「そうだな。どれだけわかってるか、聞いてからすり合わせしよう」
「そうですね」
「今度は、私から聞いてもいいかね?」
「なんですか?」新しいお茶をジットのカップに入れると「なぜPFSを辞めたのかね?」
「規模が大き過ぎるからです」
「そのほうがいいんじゃないか?」
「何事にもプラスマイナスがありますから」
「そうは言っても、あれだけの規模と勢力を持ってるんだよ」
「今でも、いろいろと情報をもらってます」
「ああ……そうだね。メインコンピュータに侵入して情報を引き出してるね」
「OBとして、使わせてもらってます」
「ハハハハハッ! いい度胸してるな!」
「悪いことで利用してるわけではありませんから」
「いい理屈だよ」
「今度はこちらから。もう一つ聞きたいことがあります」
「なんだね?」
「彼らのいる組織についてです。俺たちは、この大陸に来るまで、例の組織のことは知りませんでした」
「そうか」
「あなたはどこまで組織のことについて知ってますか? あの組織に入りたいというからには、詳しく知ってるのでしょう?」
「いや、私も詳しくは知らないんだよ」
「本当ですか?」
「今の時点で知ってることは、ここ一年の間に活動を始めたこと。幾つかのチームに分かれてるらしいこと。秘密厳守のため、活動してる組織員は、いざというときのために小型爆弾を持ち歩いてるらしいということだ」
「それはすごいな。でも、詳しく調べもせずに、なぜあの組織に入ろうと思ったんですか?」
「君たちの目的と同じだと思うよ」
「俺たちと?」
「君たちも、あの組織に入ろうと思ってるんだろう?」
「……ええ、まあ」
「なぜだね?」
「それは……」
「あの組織がどういう趣向で活動してるのか、探るためだろう?」
「では、あなたも」
「そうだ」
「スタンたちはこの事を知ってますね?」
「だから、すぐに本部へ連れていけないと言ったんだよ」
「そうそう、本部と言ってましたね」




