13 合流
「あの、失礼ですが」
不意に声を掛けられて振り向くと髭を生やした男性が立っていて、キラの顔を見るとホッと息を漏らし「お待たせしました」
「エッ? あ、ああっ! 大丈夫でしたか?」
「はい。すごくドキドキしましたけど、何とか出てこれました」
「ところで、他の方たちは?」と聞いたとき、男の後ろから女の子がこちらへ向かって走って来るのが見えた。
「お姉ちゃん!」
「まあ、メルディア。恐くなかった?」しゃがんで出迎えると「うん、大丈夫!」
「皆さんも、ご無事で何よりです」彼女の後ろから姿を現した数名の男女に声を掛けると「また自由になれるなんて、とても嬉しいわ」
「この日が来るのをどれだけ待ち望んだか」
「おいキラ。本当に彼らなのか? どう見ても普通の人間だぞ。どんなトリックを使ったんだ?」目を丸くしているショウに「彼らの額を見て」
「額?」目の前にいるメルディアの額を見ると、小さな金属片が付いている。
「あれ? これは」
「アンジュの額に付けたのと同じものよ」
「ああ、あれか」
「納得したかしら?」
「したけど、それ、どこから手に入れたんだ?」
「PFSの研究室からよ。研究者の一人が知り合いで、こっそり回してもらってるの。まだ試作段階だから注意して使えと言われてるけど、助かってるわ」
「ヘェ、そんなものを開発してたのか」
さて、彼らはどうやってここまで来たのか。
キラがメイドになりすましてメルディアに付き添っていたとき、彼女のポケットに金属片と手紙を入れておいたのである。
彼らは、食事が終わって見張りが出ていったあと手紙を読み、額に金属片を付けて変化したあと窓から抜けだし、キラが鍵を外しておいた裏庭の窓から再び屋敷の中へ入った。
その後、手紙の指示に従って従業員用の更衣室へ行き、段ボール箱の中に入っていた服に着替えると、何食わぬ顔をして出てきたのである。
「そろそろパーティがお開きになる時間よ。私たちもお暇しましょう」
敷地内に設けられているタクシー乗り場へ向かうと、客待ちしていたタクシーに彼らを乗せ、出発させると、入れ違いにパトカーが数台、連なって入ってきた。
「グッドタイミングね」
けたたましいサイレンを鳴らして玄関ホール前に止まると、先頭車から降りてきたスーツ姿の男性がこちらへ歩み寄ってくる。
「ドンピシャだよ」先にショウが声を掛けると「取り締まりは時間が命だからな」
彼はショウの友人であり刑事だった。
屋敷にいた招待客は、突然のパトカー乱入に驚いて騒ぎだしていたが、ショウの話を聞いた刑事が警官たちになにやら指示を出すと、一斉に屋敷目指して走っていくので、その光景を見ていた数名の客が何か悪いことが起こったと感じとり、パーティ会場はパニック状態になった。
すると、その騒ぎを聞きつけて当主のアルドが姿を現し「この騒ぎは何事だ!」ショウたちのところに来ると怒鳴りつける。
そこへ、警官に連れられて、屋敷内から数名の男女が出てきた。
彼らはシルバーフェニックスの買い手、つまり、裏取引の客が雇った狩り人たちである。
今日、このパーティに便乗して、彼らを引き取りに来ていたのだ。
他の招待客が帰るまで、屋敷の奥にある部屋で待っていたところを、警官に踏み込まれたのである。
「詳しい話を伺いたいんですが、アルドさん」
刑事がショウから受け取ったコピーのリストを見せると、抗議していた彼も返す言葉がなくなり、そのまま大人しくパトカーに乗り込むと連行されていく。
残っていた招待客たちは遠巻きに取りかこみ、それぞれ推測して事件内容を話し合っている。
そんな彼らを、残った警官が誘導するために散らばった。




